誰でもある程度は、目の前の行動を取るかどうかを「賭ける価値があるかどうか」という基準で判断しているものだ。

 簡単な例として、一般的な6面体のサイコロを振る賭けをする場合のことを考えてみよう。この賭けでは、6が出れば200ドルの賞金がもらえるが、それ以外の目が出た場合は10ドルを失うことになっている。

Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ画像:『マッピング思考』

 賭ける価値があるだろうか。

 そう、これは賭ける価値があるといえる。

 この賭けにどれくらいの価値があるのかは、「期待値」を計算することで具体的に知ることができる。

 期待値とは、その賭けを際限なく行った場合に平均的に得られる値のことだ。賭けの期待値は、各結果の確率と価値を掛け、その結果を合計することで導ける。この賭けでは、次のようになる。

{(勝つ確率=1/6)×200ドル}+{(負ける確率=5/6)× -10ドル}=33.33ドル - 8.33ドル=25ドル

 つまり、この賭けを際限なくり返した場合、平均の獲得額は約25ドル。サイコロを振っただけで得られるのなら、悪くはない額だ。

 負ける確率は6分の5と高いものの、十分に「賭ける価値がある」賭けだといえるだろう。

「たとえ『テスラ』が失敗しても…」

 とはいえ、起業のような対象を賭けにして正確な確率を導こうとするのは、より複雑で主観的な試みになる。

 その価値には、お金以外のさまざまな要素も含まれている。

 たとえば、「会社を経営することで、どれだけの楽しみが得られるか?」「たとえ失敗したとしても、その後で役に立つ人脈やスキルを手に入れられるか?」「自分の時間がどれだけ奪われるか?」「社会的な信用度(または汚名)はどれくらい得られるか?」といったことだ。

 とはいえ、たいていの場合、大まかな見積もりをすることならできる。

 これまで見てきたように、イーロン・マスクはテスラが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見積もっていた。