中高生の読書に対する三大ニーズを満たし、若者に好まれる四つの型が書籍にはあり、その中の一つに「余命もの」と「死者との再会・交流」があるといいます。『余命10年』や『桜のような僕の恋人』など映像化されることも多いこれらの型は、なぜ若者に人気を集めるのでしょうか?また、1930年代に出版され、映像化されたある作品との共通点も指摘されます。前回に続き、飯田一史さんの著作『「若者の読書離れ」というウソ 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか』(平凡社新書刊)から紹介します。

「余命もの(死亡確定ロマンス)」と「死者との再会・交流」

 中高生に人気の「型」の一つは、いわゆる「余命もの」と「死者との再会・交流」である。この二つをひとまとめにしているのは、どちらも「主人公と近い人間の死が絡んで泣かせる話」だからだ。かつ、デスゲームやサバイバルものとは違って、暴力描写やエグい展開、恐怖は扱われない。

「余命○年」「死者との再会」を扱う本を、今も昔も若者が大好きな理由「余命10年」は小松菜奈さん、坂口健太郎さん主演で映画化された(写真は韓国で会見する小松さんと坂口さん) Photo:The Chosunilbo JNS/gettyimages

 まずは「余命もの」から解説しよう。「余命もの」とは、主人公または主人公の想い人(となる存在)の死期が宣告されている、または死が近いことを予感させる病気等を患っている状態から物語が始まり、その人物または主人公側が死んで終わるという「泣ける話」である。かつては「難病もの」と呼ばれていた。なお本書では、必ずしも作中で「余命○年」と明言されていなくても、なんらかのかたちで男女片方の死が物語序盤からほぼ確定している(少なくとも読者には「こいつ死ぬんだろうな」とわかる)悲恋もの全般を含めて「余命もの」と呼んでいる。筆者はこうしたタイプの作品は、物語の内容に即して「死亡確定ロマンス」と呼ぶべきだと考えているが、本書ではわかりやすさを重視して巷間よく用いられている「余命もの」という呼称を基本的に採用する。