さらに、途上国の人からすると、日本の医療制度は夢のような仕組みです。医師のレベルが高く、病院がどこにでもあります。途上国では、比較的発展している国でも医療レベルがかなり低く、健康保険の仕組みがない場合も少なくありません。

 その場合、医療費はすべて実費で負担しなければならないので、治療を受けられない人が多いのです。ですから、医療を受けるためだけに日本に滞在したいという人がいるのも納得できる話です。

「外国人が来たところで、日本の医療保険は適用されないのでは?」と思うかもしれませんが、実は日本は医療保険の加入条件が大変緩いことで世界的に有名になってきています。

 NHKが2018年に行った取材だと、健康保険制度を利用して高額な治療を受けている事例が明らかになっています。夫が日本人の中国人女性が、自分の娘を夫の会社の健康保険の扶養に入れて、日本の健康保険で高額ながん治療を受けているというのです。また、同じくNHKの取材で、日本の保険証を手に入れる方法を指南する業者まで存在することも明らかになっています。

 このように、日本のコスパ最高の医療制度を求めて、外国人が来日しているのです。

 日本の国民健康保険は2012年から、3カ月以上滞在する人は加入できるようになっています。それ以前は1年以上滞在しなければ加入できなかったので、条件がかなり緩和されたことになります。

 2019年の厚労省の調査によれば、外国籍で国民健康保険に加入する人は2008年の85万人から2017年には99万人に増えていて、全加盟者のうち3.4%を占めています。外国人加入者の53.5%が20歳から30歳の若い人です。日本人の場合は43.5%が65歳以上で、32.8%が40歳以上なので、年齢構成がかなり違います。

 外国人加入者は若い人が多いので、今のところ医療費の支出は大きくはなく、全体の0.99%程度です。

 一方で外国人加入者への出産一時金の支払いは9798件で全体の11.3%を占めます。

 もちろん、ほとんどは正当な受給だと思いますが、中には外国人による不正受給事件も起こっています。

 2023年5月、ベトナム人の男性が「双子が生まれた」という嘘の申請をし、出産一時金80万8000円をだまし取ったとして逮捕されました。

 この男性は同様の手口を繰り返していて、1600万円以上の一時金を得ていたと報道されました。この事件も、日本の健康保険制度の緩さを表している一例です。

「海外出産」でも
支払われる一時金

 日本の国民健康保険は大変寛容で、海外で治療を受けた人や出産した人も後日日本で申請すれば医療費や一時金がもらえる仕組みになっています。