他の先進国ではこういった設備が壊れていたり、そもそもまったく存在しなかったりすることもあります。特に欧州はひどい国が多く、多目的トイレはほぼ壊れていると言ってもいいぐらいです。しかも掃除もしないので、中は汚れていてとても使える状態ではありません。

 しかも、日本では障害のある子どもに対するケアも実に手厚く、支援学級に入れないということはまずありませんが、他の先進国では予算不足で無理やり健常者用のクラスに押し込められるということがめずらしくありません。明らかな知的障害があっても拒否されるのです。

 先進国でこの調子ですから、途上国の状況は想像するまでもありません。途上国の場合はそもそも障害者福祉も何もないというところが多いのです。普段から住んでいるところが『北斗の拳』の「修羅の国」状態ですから、日本の障害者用の設備ははっきり言って異世界のように感じるはずです。

書影『激安ニッポン』(マガジンハウス)『激安ニッポン』(マガジンハウス)
谷本真由美 著

 高齢者福祉に関しても同じで、日本には介護保険があり、ほぼどこの町にも高齢者施設があります。ところが他の先進国には介護保険のようなものがない国もけっこうあります。介護はすべて100%自己負担であることが当たり前だったり、故人の家を市役所が売却し、その費用で介護費用を出させるという仕組みになっていたりします。

 そもそも、途上国では高齢者を介護する施設がない場合もあります。そういう国では、歳を取ったらそのまま放置されて死ぬか、家族が面倒を見るほかありません。老人ホームや訪問介護などでプロに介護をお願いできる日本の仕組みは本当にすばらしいのです。

 しかも介護保険があって、費用を負担しなければならないのは一部ですし、自治体は家のリフォーム費用やさまざまな器具のレンタルまでしてくれます。

 今はまだ、介護サービスを受けに日本に来る人はほとんどいませんが、医療制度のように、いずれは安くて質の高い介護サービスを求めて、海外の人がやってくるようになるでしょう。