企業にとっては開催のハードルが高まるからこそ、どんな学生に参加してほしいのか、何を学んでほしいのか、自社のどんな魅力を伝えたいのかをしっかりと設計していく必要があります。学生にとっては、スケジュール上の観点からもインターンシップ参加の機会が限られることが予想されるため、参加の目的を改めて整理して臨めるといいでしょう。
「引く手あまた」だからこそ
自分をしっかり見つめよう
企業の採用意欲が好調に推移し、学生にとって追い風が吹いている昨今の状況は、学生には喜ばしい状況ともいえますが、引く手あまたとなる中で、自己分析、企業分析も深め切れぬままに就職先を決定してしまうと、入社以降、「こんなはずではなかった……」と思い悩むことにもなりかねません。
人生において仕事がすべてではないと思いますが、豊かな人生を送る上で、「働く」ということは大きな要素を占めると思います。世間や他人の評価軸だけで、自身の就職先を決めてしまうのではなく、自分らしさや強みをしっかりと内省する中で、これからの人生におけるありたい姿などをしっかりと見据えながら、ここなら自分らしく輝けると思える1社を見つけて頂ければと思います。
また、個人が自分らしさを深く内省する上で、自身のことや働くことをよく知る周囲の第三者との対話は非常に重要なってくると思います。自身のことをよく知るご家族や知人、そして就活に詳しい大学のキャリアセンターの職員の方々に、積極的に相談してみましょう。
また、企業の人事担当の皆さんには、短期的な採用充足を目的とする採用選考者としての立ち位置だけでなく、中長期的な視点で、一人の若者が自分らしいキャリアを築くためのキャリア開発支援を目的とした、キャリアアドバイザーとして学生の皆さんに寄り添って頂ければ幸いです。
個人の価値観や活動方法も多様化する中で、採用活動を通じ、学生一人ひとりに向きあおうとする姿勢は、個人に対し非常によい印象を生むと思います。そういった印象が深く残れば、例え、自社に入社してくれなかったとしても、近い将来、中途入社者としてジョインしてくれるかもしれませんし、自社の商品・サービスのファンになってくれる可能性も高まります。
採用を取り巻く環境変化が激しさを増す今、従来の考え方や手法だけで採用充足を実現することはますます厳しくなっていくでしょう。学生との深い相互理解を進めて、よりよいマッチングを作っていくために、これからは各企業のより一層の創意工夫が求められていくと思います。
(リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥)