新しい販売ルートとしての
アンテナショップとECサイト

 葬儀業での外注業務の内製化から始まった事業の多角化の結果、今では自社商品がどんどん増えてきています。しかも、自社商品は自分たちで売り切るのが方針なので販売ルートがますます重要になってきました。

 商品の原材料の生産や調達が「入口」だとすると、販売ルートは「出口」にあたります。この両方をバランスよくコントロールすることで、利益をしっかり確保し持続可能な強いビジネスができます。私たちの場合、生花にしても仕出しにしても米にしても、葬儀で使えるものであり、あらかじめ出口が見えていました。だからあまり心配することなく始められたのです。

 中小企業が新しい事業を考える場合、出口を意識することはとても大事です。新しい事業で扱う商品やサービスの顧客はどこにいて、どれくらい売れるのか、他社とはどこで差別化を図るのか、できるだけ具体的に見極めることです。

 出口がきちんと見えてこないようなら、いったん立ち止まったほうが無難です。出口が見えてきたら取り組みを再開すればいいわけで、なんとなく大丈夫だろう、というくらいの感覚で始めるのがいちばん危ないと思います。

 新しい販売ルートとして最近、力を入れているのがアンテナショップ(実験店舗)とインターネットを利用したECサイトです。

 アンテナショップはまず2019年、北海道・栗山町の水田の横に5坪ほどの店舗を作りました。春から秋にかけてプリンやソフトクリームを販売し、冬は雪が多いので休業です。

 店舗は私が基礎からほぼすべてセルフメイドで建てました。私は、ホームページでプリンや卵を売るにしてもリアル店舗がないとだめじゃないかと言い出したのですが、スタッフはみんな田植えなどで忙しく相手にしてくれません。それならと自分で柱と壁のキットを買ってきて組み立て、壁にはネットを参考に断熱材も入れました。水道工事はさすがにプロに頼みましたが、やろうと思えばかなりの部分までできます。建築費用は350万円ほどで収まりました。この程度の投資であれば、さほど売上が伸びなくても損することはありません。夏場にはソフトクリームを中心に月100万円ほど売上があるので4~5年で回収できるはずです。