家族写真はイメージです Photo:PIXTA

高齢化が進み、親の介護費用が大きな課題となっています。認知症になれば実家売却などが難しくなります。こうしたリスクに備えて、財産管理を家族に委ねる家族信託が徐々に広がりつつあります。今回は家族信託のメリットとデメリットについて解説します。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)

信託法改正で広がる家族信託は
誰にとってメリットがあるのか

 2006年の信託法改正により徐々に広がってきた家族信託。今回はこの家族信託の本当のところのメリット・デメリットについて触れてみたいと思います。

 信託と聞くと、「信託銀行を思い出す」という方も多いと思います。信託は言葉の通り「あるものを第三者に信じて託す」行為です。そして信託には2種類あります。

 一つ目は商事信託。信託銀行をイメージするとわかりやすいと思いますが、商売として信託を請け負うことです。日本では信託銀行にせよ信託会社にせよ、業として行うには信託業法に基づき監督官庁の認可を得る必要があるなど、非常に高いハードルがあります。

 二つ目は民事信託で、商事信託とは反対に位置しています。商売として信託を請け負うものではなく、利益を得ることを目的としたものではありません。よって商事信託と異なり許認可のハードルはなく、家族が信託を請け負うことができますので、商事信託と比べてはるかに簡単に組成することが可能です。そして、民事信託の一種が家族信託と考えてください。「家族に信じて託す」という、まさに文字通りの制度です。

 一般的な家族信託は、親が自分の財産を子どもなど、信頼できる人に託すという形で進められます。よくあるパターンとしては、親子間で信託契約を結びます。委託者兼受益者(信託を依頼する人かつ信託する財産から利益を受ける人)=親、受託者(財産を管理する人)=子どもという形です。

 最初に結論を申し上げますと、家族信託は「認知症になったとき、自宅を売却してその資金を元に介護付き有料老人ホームに入ろう」と考えている親にメリットがあります。

 どういうことか、具体例を挙げて解説したいと思います。