私はデパ地下料理で本を出せる(笑)

永井:外食はしないんですか?

今村:普段、滋賀にいるときはほぼしないですけど、東京に来たときは美味しいところを探したりしてます。

永井:私は外食も大好きだし、デパチカも大好き。私はデパ地下についての本を出せる(笑)。

今村:あとは、やっぱり古典芸能が好きなんですか?

永井:そうですね。歌舞伎も含めてお芝居が好きだからよく行きますし、ミステリーもアートも好きだし、ファッションも好きですね。あと、経済のニュースとか面白い。『商う狼』では、お金の流れと人事みたいなことをずっと考えていました。

【直木賞作家スペシャル対談】直木賞作家が教える小説の執筆スタイル

今村:僕はどっちかというと組織とか経営系が好きなんですよ。

永井:組織の分析は私も好きです。ただ、権力闘争も平安とかの腹黒い感じが好きなんです。刀を抜いての戦いじゃなくて、呪詛(じゅそ)とかの感じ(笑)。

今村:(笑)。僕はわちゃわちゃしてるのが好き。ダンス・インストラクターをしていた頃は、たくさんの教え子に囲まれてながら生きていて、2015年頃から一転して孤独な生活をするようになったんですけど、そこでメンタルの不調をきたすことがわかってきた。

結局、作品を作るときは孤独になるわけだから、それ以外は人と関わる時間を作らないとバランスを保てない。何かを1人でやることと、みんなでやることの両方があったほうがいいんです。

執筆とそれ以外のバランスが大事

永井:それはそうだと思います。私もみんなでやっていることがあって、無給で児童養護施設の支援活動をしているんです。そこで、ときどきミーティングに参加したり施設訪問みたいなことをやったりしてます。

例えば子どもたちにITを教えるプロジェクトを立ち上げようとして、みんなで「あーでもない、こーでもない」と話し合ったりPRをしたりしていると、小説を書くのとはまた違ってちょうどいいバランスが取れているような気がします。

今村無駄なように見えて無駄じゃないというか、作家は常にそういうバランスを模索してると思います。そこを1歩間違えると破たんするというか、しんどくなる。

【直木賞作家スペシャル対談】直木賞作家が教える小説の執筆スタイル

永井:たぶんギリギリのところを歩いてるぐらいがちょうどよく物事を考えやすいけど、それがちょっとでも崩れると大変なことになる。そこを編集さんにフォローしてもらっている部分があるかもしれないです。

今村:今日はいろいろお話ができて、永井さんのイメージがいい意味で変わりました。作品を読んでいて、もうちょっと硬いイメージを持っていたから、「めっちゃ怒られたらどうしよう」とビビってたんです(笑)。

永井:私も「どや!」って来られたらどうしようと思ってた。よかったです(笑)。

今村:今日はありがとうございました。

永井:ありがとうございました。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)の刊行を記念した特別対談です。