アウトプットで語り、「ユーザー視点」を貫き通す
両氏のプレゼンテーションを踏まえ、鷲田祐一氏は「両社には、金融や医療といった規制の強い産業に参入し、新たな事業領域を切り開いてきたという共通点がある。創業のファーストステップから、産業全体を変革しようというビジョンを非常に強固に持っていたことが現在につながっているのではないか」とコメントした。
さらに、両社のデザイナー比率に着目し、マネーフォワードの4%(社員約2000人のうち、およそ80人)、エムスリーの3.4%(社員約580人のうち20人)が、大企業の平均値(1〜2%)より大幅に高いことを確認。「デザイン経営が機能しやすい組織規模の一つの目安になるのではないか」と指摘した。
社内のコミュニケーションに関する話題では、「経営層とのコミュニケーションでは、常にユーザーを主語にして話すのが自分の役割だと思っています」と金井氏。古結氏も、「CDOに就任した直後は、経営会議でアウトカムを一生懸命に示そうとしていましたが、アウトカムを出すには時間がかかるし、デザイン活動を無理に経営言語に翻訳するのもハードルが高い。今は、デザイナーの最も大きな役割である『形を作る』をやり切ることに集中し、具体的なアウトプットからどんな体験価値が生まれたかを中心に語るようにしています」と言う。
他部門とのコミュニケーションでも「泥くさくアウトプットを提供し続ける」と古結氏。「例えばセールス部門には、こちらから働き掛けて営業資料をデザインさせてもらいました。それが好評だったので、次は誰でも簡単にきれいな資料が作れるシステムを作った。それで売り上げが上がり、色んな相談が舞い込んでくるようになりました」。金井氏も「ディスカッションのファシリテーションや、イベントの企画など、できることを片っ端から手掛けて『デザイナーは色んなものをデザインできる』という認知を広げ、社内でのプレゼンスを向上させていきました」と、これまでを振り返った。