撤退の判断は事業・プロダクトの当事者ではなく、組織として決定し、当事者はその決定に従うかたちにすべきです。また、KGIだけで撤退を判断してはいけません。全ての事業は最終的には収益を上げるためにあるのですが、現時点で収益が上がっていなくても価値があり、今後収益が上がる見通しがつくような事業を早計に撤退判断しないように注意が必要です。

 特にスタートアップの起業直後の時期などは収益が上がっていなくても、先行指標となる指標の変化、ユーザー増加率や大手企業とのパートナーシップといったトラクションも見るようにすべきです。判断にはNorth Star Metric(北極星指標)と呼ばれる、長期的な顧客価値向上を測るための指標も用いるとよいでしょう。

企業として必ず果たさなければ
ならない使命を全員に徹底させる

 私は、以前ニッポン放送の方から、災害時の放送局の対応について教えていただいたことがあります。これも一般の企業活動にも応用できそうだと思うので紹介しましょう。

 ニッポン放送のスタジオの壁には、地震や災害が起きたときにアナウンサーが読み上げるべきテキストが常に掲示されています。緊急地震速報を受信したときにも慌てず、その時の状況に合わせて内容を読み上げられるようになっているのです。

 また、放送局の使命は災害時に正しい情報を放送することだとして、常に局内にアナウンサー1人と管理職員が待機して、土日祝日、深夜であっても、必ず誰かが対応できるようにしているとのこと。さらに、千葉県木更津市にある送信設備の場所が社員全員に周知されていて、都内から送信ができなくなった場合にも何らかのかたちで放送を続けるようにマニュアルがまとめられていて、予行演習も行われているといいます。

 企業として、必ず果たさなければならない使命を全員に徹底させる。これは素晴らしい姿勢だと思いますし、ほかの企業も見習えることです。何が大事なことかを常に意識し、それを遂行するために常に準備を怠らないというのは、一般企業におけるBCP(事業継続計画)にもつながる考え方ではないでしょうか。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)