「会議がうまく仕切れない」「商談に自信が持てない」「プロジェクトを進めるのに苦労している」…。こんな悩みを持つ人はたくさんいるはずだ。そこでお勧めしたいのが『今すぐ結果が出る 1ページ思考』。本書では、考えを1ページにまとめ、思考を研ぎ澄ませる手法を紹介している。このメソッドは、ミーティングやプロジェクトにとどまらず、ビジネスプランの説明や、本を読んだ学びのまとめ、人生プランの計画など幅広く活用できる優れものだ。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「1ページ思考」とは何かについて紹介していく。(構成:長沼良和)

1ページ思考Photo: Adobe Stock

「1ページ」思考で優れたキャリアを構築

「1ページ」思考とは、文字通り1枚の紙に考えをまとめることである。

 社内で使う提案書や社内メモを「1ページ」にまとめて議論することで、円滑に業務を進められる優れものである。

 本書の著者である長谷川晋氏は、「1ページ」思考により「ビジネスの戦闘力」を身につけ、著名な企業を渡り歩いてキャリアを構築した。

P&G時代を振り返って強く感じるのは、とにかく鍛えられたということです。おかげで、「ビジネスの戦闘力」と私が呼んでいる力が身につき、後のキャリアを築いていくことができたのだと思っています。(P.2-3)

 多くのビジネスパーソンが、会議がうまく仕切れなかったり、ミーティングの結論が出なかったりということで悩んでいるだろう。

 その際に「1ページ」を活用すれば、会議の進行は大きく変わるはずだ。

1ページ思考の具体的なイメージ1ページ思考の具体例(上記内容はあくまで架空のものです)

一枚に思考をまとめるメリット

 長谷川氏が「1ページ」思考に気付いたのは、P&Gに在籍していたときの「社内メモを1ページにまとめる」という習慣だったという。

 しかし、1ページにメモをまとめるのが意外と難しいことを思い知った。

 たとえば、新しいキャンペーンをやろうとする際に、企画内容を「1ページ」にまとめて上司のところへ持っていくと、徹底的に添削されるのだ。

 赤ペンで修正されたところを直して改めて上司のところへ持参する。これを繰り返していくことで、「1ページ」思考が研ぎ澄まされて、提案の質も向上していったのである。

振り返って思うのは、「1ページ」にすることで思考のプロセスが鍛えられたということです。P&Gで「1ページ」に書かされたのは、考えを整理するプロセスでした。これは、そうそう最初からできるものではない。ただ、「1ページ」にまとめることの利点は実感しました。(P.23)

 著者は社内メモを1ページにまとめるやり方を自分なりにアレンジした。

 それをミーティングに持参することで、さまざまな部署の参加者とも目線を合わせて建設的な話し合いができるようになったのである。

「1ページ」の構造

「1ページ」思考は、基本的なフォーマットが決まっている。主に4項目で成り立つ。

「会議の目的」は何か?(この時間で何を達成すれば成功なのか)
「背景」は何か?(議論のベースとして知っておいてほしい情報)
「討議ポイント」は何か?(議論して合意するべき主要なポイント)
「ネクストステップ」は何か?(誰がいつまでに何をするのか? いわゆる、段取り)(P.25)

 会議に入る前に①の「目的」を明確にして、ここで何を達成するのかを明確にする。

 ②の「背景」は、なぜこの会議をしなければならないのかという理由や、知っておいてほしい情報等を入れる。

 最初に「目的」を共有して目線合わせをして、メンバー全員で議論のベースとなる情報を「背景」として共有する流れである。

 ③の「討議ポイント」「私はこうしたい」と提案することである。ここでのポイントは自分が良いと考えていることを記載するのではなく、選択肢をいくつか提示してそれぞれのメリット・デメリットを載せると良い。

 ④の「ネクストステップ」については、ミーティングが終わってからの具体的なアクションについての共有である。

 会議が終わってからの行動を念頭において臨むことで、時間的な制約やプレッシャーをみんなで共有して現実的な話ができる。

この4項目は、社内のミーティングであっても、社外のミーティングであっても、ほぼ変わりはありません。大事なポイントは、この4項目が「1ページ」にすべて的確に盛り込まれている、ということです。(P.26)

「1ページ」だからベストのコミュニケーションが取れる

 冒頭に紹介した通り、「1ページ」はペラ1枚だからといって簡単に作れると思ったら大間違いだ。

 1枚にまとめるのは、情報を取捨選択して整理しなければならなくなるので、慣れないうちは相当難しいと思っておいた方がいい。

 シンプルに見えることは奥が深いのである。

4つの項目をただ埋めていけばいいのかといえば、そんなことはない。それぞれの項目、そして全体の流れについて、考え抜き、想像力を働かせ、自分がどうしたいのか肚を決めながら書いていく必要があります。(P.39)

「1ページ」という制約の中で、ベストのコミュニケーションを取るにはどうすればいいか考え抜かなければならない。

 逆に、それはいろいろな情報を集め、整理して考え抜くことになるので、理解が深まることになる。それによって思考の軸がはっきりすることにつながる。

「1ページ」は、チームメイトとの円滑なコミュニケーションを実現するだけでなく、作るプロセスで考え抜く練習になり、結果的に視野を広げることになる。