発見当時、山頂付近では雨が降っていて、風は風速12メートルと強く、気温は3度しかありませんでした。男性は8日に入山し、オプタテシケ山まで縦走して戻る途中でしたが、上空の寒気の影響で気温が急激に下がり、低体温症を発症したとみられています。

◆死なないために
 3000メートル級の山や、緯度が高い北海道の山では、気象状況によっては気温が急激に下がり、大荒れの天候になることも珍しくない。事前に天気予報をチェックし、悪天候が予想されるときは計画を延期・中止にするのが賢明だ。また、たとえ夏でもダウンジャケットなどの防寒具は必携である。

 低体温症の予防・対処の4原則は、「隔離」「保温」「加温」「カロリー摂取」。寒さや風雨を遮ることのできる山小屋などに避難したら、濡れたウェアを着替え、下のイラストを参考にして防寒具やレスキューシート、シュラフなどで体を保温する。

 さらにお湯を入れた耐熱性の容器を胸などに当てがって加温するとともに、高カロリーの温かい飲み物を飲む。体表部の冷たい血液を体の深部に送り込んでしまうマッサージはNG。

図2_低体温症の応急手当低体温症の応急手当 拡大画像表示

ケース4「道に迷って死ぬ」
多いのは下り道で迷うパターン

 北海道札幌市の手稲山で1月中旬、登山をしていた40代男性から「道がわからなくなった。足がつって動けない」と、消防に救助要請が入りました。男性は前日から単独で入山しており、「ビバークの装備はある」と話していましたが、その後、携帯電話は通じなくなりました。通報を受けて、警察と消防は4日間にわたって捜索を行ないましたが発見できず、捜索は打ち切られました。

 それからおよそ3カ月後の4月下旬、雪解けに伴い再捜索をしていた道警ヘリが、手稲山の標高約450メートル地点で、性別不明の遺体を発見しました。そばにはザックがあり、遺体の一部は白骨化していましたが、DNA型鑑定の結果、捜索していた男性と判明しました。

◆死なないために
 山に登れば、誰もが多かれ少なかれ、道に迷うものだ。しかし、注意していれば間もなくルートを外れたことに気づき、引き返すことで正しいルートに戻ることができる。「山で道に迷ったら引き返せ」というのは登山の鉄則であり、登山者なら誰もが知っていることであろう。