ケース2「雷に打たれて死ぬ」
木の下への避難は注意が必要

 8月上旬のある日の午後、大学の登山サークルの4人パーティが、南アルプスの北岳~間ノ岳稜線上をたどっていたときに、雷が鳴り出して雹や雨が降ってきました。このため彼らは近くにある山荘に逃げ込みましたが、最後尾を歩いていた20代の男子大学生の姿が見当たらなくなりました。

 その後、しばらくして別の登山者が登山道で倒れている学生を発見し、消防に通報。連絡を受けた山荘から、夏山診療で常駐していた医師が現場に駆けつけ、学生の死亡を確認しました。頭部には燃えた痕があり、足先に掛けて電流が流れた痕跡も見られ(ズボンが焦げて破れたようになっていた)、のちに雷が頭部を直撃したことによる落雷死であることが特定されました。

◆死なないために
 出掛ける前に天気予報で大気の状態や雷雨の予報、雷注意報などをチェックし、リスクが高そうなら計画を練り直す。とくに雷が多発する夏山シーズン中は「早発早着」を実践し、午後の早いうちに行動を終える計画を立てたい。行動中は気象情報サイトの雷レーダーを見たり、雲の様子を観察したりしてリスクを早めに察知しよう。

 雷は高いものに落ちる性質があり、山頂、尾根、立木など、山には雷が落ちやすいものがあちこちにある。唯一、安全なのは山小屋なので、山で雷に遭遇したら、急いで最寄りの山小屋に逃げ込むのがいちばんだ。

 避難するときはできるだけ姿勢を低くして移動する。雨が降っていても傘をさしてはならない。近くに山小屋がなければ、谷筋や窪地、山の中腹などに逃げ込んで、できるだけ姿勢を低く保って雷が去るのを待つしかない。

 心情的には大きな木の下に避難したくなるが、木に落ちた雷が人に飛び移ってくる「側撃」が起こる可能性があり、かえって危険。ただし、下のイラストで示した保護範囲内にいれば、比較的安全だとされている。

図1_落雷の被害を受けにくいとされる保護範囲落雷の被害を受けにくいとされる保護範囲 拡大画像表示

ケース3「夏なのに寒さで死ぬ」
真夏でもダウンジャケットを必携しよう

 北海道の十勝連峰のベベツ岳で8月上旬、40代の単独行男性から「雨や風が強くて動けない。テントも張れない状態で、低体温症になりそうだ」と、警察に救助要請が入りました。ただちに警察の救助隊が出動し、その日の夜7時前、山頂から500メートルほどの地点で、体にテントを巻いた状態で倒れている男性を発見しました。しかし、すでに心肺停止の状態で、その後、死亡が確認されました。