日本銀行の総裁・副総裁人事が固まった。新体制は、デフレ脱却という悲願に向け、大きな責任を負うことになる。市場の期待は、既に大きく膨らんでいる。だが、実際に事を進めるのは、そう簡単ではない。大幅金融緩和の副作用への対処、日銀内の組織統制、政府や省庁との調整など、新総裁を待ち受けるハードルは高い。

 結果的には、安倍晋三首相の“作戦勝ち”といえるだろう。

 日本銀行の総裁・副総裁の人事案。総裁にアジア開発銀行の黒田東彦総裁、副総裁に学習院大学の岩田規久男教授、同じく副総裁に日銀の中曽宏理事で、2月28日に国会に提示された。10日間ほどの所信聴取などを経て採決されるが、各方面に配慮したこの人事案が同意される可能性は高い。

 人事案の権限を一手に握る安倍首相は、2月半ばごろから「財務省出身などにはこだわらない」「金融マフィアとつながりのある人」と発言し始めた。黒田氏を想定したものだったと思われる。もともと岩田一政・日本経済研究センター理事長を最有力候補に考えていたが、「組織運営能力の面で、日銀副総裁時代の評判があまりよくない」(政府関係者)との感触を得て素早く切り替えたようだ。

 一方、財務省は「総裁ポストの奪還しか考えていなかった」(財務省関係者)。第一希望は、元財務事務次官・元日銀副総裁の武藤敏郎・大和総研理事長。だが、2月15日、候補に挙がっていた中で最も金融緩和に消極的とされる武藤氏が有力と一部で報じられると、日経平均株価は一時200円超下落。“市場の不同意”判定で、断念せざるを得なかった。