「所得税・住民税の計算は1年区切りで行われます。今年はまだ4分の1の期間が残っているので、その間に予期せぬ転職や休職、冬のボーナスの減額などの影響で所得が大きく下がる可能性もゼロではありません。もしも、収入が下がって控除上限額を超えてしまうと、一部の控除が受けられなくなるリスクがあるのです」

 ふるさと納税は、個人の収入に応じた控除上限額が定められており、収入が下がれば上限額も下がる仕組み。もしも、9月の段階で上限額ギリギリまでふるさと納税をした人が、その後不測の事態で収入が減ると上限額を超えてしまう。その結果、超過分がすべて自己負担になり、ふるさと納税の払いすぎを招くのだ。

「私の場合ですが、1年間のおおよその所得の目安と、控除や税額控除などの状況が見込めてきた年末に、ふるさと納税をしています。また、返礼品に関しては『どれがお得か』という視点ではなく、今年、出張や旅行で訪れた縁のある地域から選ぶようにしています」

 ルール変更に左右されず、1年間の振り返りにふるさと納税を使うと、払いすぎを防げそうだ。

ふるさと納税が
税金を学ぶきっかけに

 そして内山氏は「10月のルール変更が、税金に興味を持つきっかけになれば」と話す。

「今回のルール改正は控除に大きく影響するわけではありませんが、ふるさと納税という制度について改めて考える機会にはなったはず。実はFPとしてみなさんの相談に乗っていると、実際にふるさと納税をしても、“本当に寄付金控除が受けられたかどうか”まで把握している人は少ない印象です。毎年5~6月頃に交付される『住民税決定通知書』を見れば、寄付金の控除額がすぐにわかるので、まずはこの通知を手に取って見てください」

 住民税決定通知書に書かれた「寄付金税額控除額」が、実際に寄付した金額から自己負担の2000円を引いた額になっていれば、無事に控除が受けられた証拠だという。返礼品を選んだら終わり、ではなく控除額を確認するまでがふるさと納税なのだ。

「ふるさと納税は、所得税や住民税を身近に感じられる制度。つい返礼品に目を奪われてしまいますが、自分が納める税金や控除について能動的に関わるきっかけとして捉えてみると、税金の勉強にもなるかもしれません」

 今年のふるさと納税は、例年とは違う視点で返礼品を選んだり、税金について考えたりすると、より有意義なものになりそうだ。

<識者プロフィール>
内山貴博
ファイナンシャルプランナー
内山FP総合事務所株式会社代表取締役。福岡県に拠点を持ち、資産運用相談、保険の見直し相談や住宅ローン相談など、ライフプランの作成業務など、相談者の家計改善に取り組む。そのほか、金融機関研修やFPの育成に関わる講演会にも講師として登壇。著書に『お金の使い方テク』(朝日新聞出版)などがある。