古い事件だが旧・雪印乳業(現・雪印メグミルク)の不祥事と似ている。同事件は、2000年に雪印乳業の大阪工場で、本来は廃棄すべき原料を、隠蔽したまま製品に使って引き起こされた戦後最大級の食中毒事件だ。事件後に、スーパーマーケット等で買い物をする消費者は、新しい製品は正しい品質管理がなされているだろうとは思いつつも「雪印」というブランドと会社名を忌避した。

 同社の製品は買われなくなり、全国各地で同グループの商品が小売店から撤去される事態となった。かつて好印象を誇った「雪印」のブランド価値はネガティブなものとなり、会社としての雪印乳業は、雪印メグミルクに吸収されて消滅した。

 本件にあって、例えばCMのスポンサー企業は、ジャニーズ所属のタレント個人の知名度や好感度を大いに認めているし、タレントについているファンの心情を気にしているはずだ。しかし、他方で、ワールドクラスの性加害問題を起こしてその処理が不十分である会社と取引を続けることによるイメージ悪化を心配している。

 現在活躍中のジャニーズ事務所に所属するタレントの活動と利益を尊重するなら、「ジャニーズ」という社名は一刻も早く消し去る方がいい。

タレントは早急にリリースすべき
事務所の「移籍金」導入はどうか?

 そして、そもそも、タレントを事務所に引き留めておくことがプラスになるとは思えない。それぞれに他の芸能事務所に移籍させる、独立させる、などの形で事務所との縁を切ることを進めていくべきではないだろうか。

 タレントの立場に立つと、余程の知名度と営業力およびマネジメント力があるのでなければ、いきなり独立するのは不安だろうし、現実にリスキーな場合が多かろう。別の事務所に移籍してマネジメントしてもらうのが安心な場合が多いのではないだろうか。この際に、タレントについているマネージャーの雇用の確保にも気を配るべきだろう。

 わが国で、タレントが所属する事務所を変えるときに、「仁義を切る」とか「許しを得る」「絶対に許さない」といった類の話は聞くものの、「移籍金が幾ら」という話を寡聞にして知らない。

 しかし、ジャニーズ事務所の所属タレントの場合には、既に出演番組を持っていたり、コンサートの収入が確実に見込めたり、経済価値のあるファンクラブを持っていたりするので、複数の事務所に移籍金を入札させるような方法があっていいのではないだろうか。

「願わくは一定の経済的な対価を得ながら、所属タレントを早急にリリースする」ことが現ジャニーズ事務所にとって経営上最善の選択ではないだろうか。