しかし、私たちは食事をしたからといってすぐには虫歯になりません。それは唾液の力によって歯の表面が再石灰化(修復)されるからです。
つまり、唾液の浄化作用や中和作用によって、酸性に傾いた歯の表面のpHが中性近くに戻ることで、唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンが溶けきれなくなり、歯の表面に沈殿して再石灰化が起こるのです。
虫歯になるのを防ぐためには、なるべく脱灰の時間を短くし、再石灰化の時間を長くするとよいでしょう。甘いものを食べるから虫歯になりやすいというよりも、ダラダラと長い時間食べていると虫歯になりやすく、さらに歯にプラーク(細菌の塊)がべっとりついていると、そもそも唾液が歯の表面に触れることができずに再石灰化ができません。そのため、虫歯予防のために歯みがきは大切です。
風邪やコロナにかかりやすい人の特徴とは
ほかにも、夏場などの暑い日に生じる「あせも」や「とびひ」は、たくさん汗をかくことでpHがアルカリ性に傾き、弱酸性である肌にとっては強い刺激となるために起こります。
こむら返りもミネラルバランスの乱れにより、筋肉のpH調節がうまくいかないことが原因で起こりますし、肌と同様に弱酸性に保たれる腸内のpHが乱れると、悪玉菌が活発になりやすく、免疫系の機能が低下するため、風邪や新型コロナウイルス感染症にもかかりやすくなってしまいます。
では、腸内を弱酸性に維持するためにはどうすればよいのでしょうか。酸性食品を食べれば腸内が酸性に傾くのではないかと思われるかもしれませんが、実はあまり効果はありません。それよりも、腸内にいる善玉菌にエサを与え、その菌が分泌する腸内代謝物として乳酸などの有機酸を作ってもらうことが大切になります。
有用な善玉菌を育てるには、「生きた善玉菌を含む食品」(プロバイオティクス)と「腸内の善玉菌を育てる食品」(プレバイオティクス)を摂るのが効果的です。
前者には乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルト類、あるいは麹菌や酵母菌で発酵した発酵食品(納豆やぬか漬け、キムチなどの漬物、甘酒、味噌や塩麹などの発酵調味料、酒かすなど)があります。
後者には食物繊維やオリゴ糖などがあります。これらはヒトの消化酵素では消化ができないので、そのままの状態で腸まで届き、腸内の善玉菌を育てます。
海のpH低下で何が起こる?
地球環境においても、pHは密接に関わっています。地球温暖化の促進とともに、大気中の二酸化炭素濃度が上昇しつつあります。大気の間を落下してくる雨は、その間に二酸化炭素と反応し、酸である炭酸を発生するため、二酸化炭素濃度の上昇に伴い、雨のpHは下がります。
近年、酸性雨による環境への悪影響が問題視されていますが、さらにpHの低下した雨が海に流れるなどして、海の酸性化をもたらしています。実際、海のpH低下は長期的な観測データから明らかになっており、炭酸カルシウムの骨格や殻を形成している貝類やウニ、サンゴなどは、pH低下により、十分な殻や骨格の形成ができなくなる可能性があると指摘されています。
さらに、海は大気中の二酸化炭素を吸収し、平衡を保っていますが、温暖化によって海水の温度が上昇すれば、海水が吸収できる二酸化炭素量は減少するため、大気中の二酸化炭素濃度が増加し、温暖化が促進する可能性があるのです。
このように、私たちの身近な暮らしから地球規模の環境問題に至るまで、ありとあらゆるものに大きな影響を与えている「pH」。知れば知るほど奥が深い「pH」の世界を覗いてみてはいかがでしょうか?








