「pH」は、以前ドイツ語の「ペーハー」と読むと習ったが、現在では、国際単位系に合わせて英語の「ピーエイチ」と読むようになり、教科書にもそのように記載されるようになった Photo:PIXTA
突然ですが、読者の皆さんは「pH」を何と読みますか?これをどう読むかで、もしかすると世代がバレてしまうかもしれません。誰もが小学校の頃に習ったであろうこの「pH」。実は、身の回りのありとあらゆるものに関係しています。虫歯になるのも、こむら返りが起こるのも、そして地球温暖化が促進するのも「pH」が深く関わっているのです。理学博士で名古屋工業大学名誉教授の齋藤勝裕さんの新刊『それ全部pHのせい』(青春出版社刊)から、「pH」を知ることで見えてくるこの世界の真実や新たな側面について抜粋して紹介します。
世界は「酸」と「アルカリ」でできていた!
私たちは多くの物質に囲まれて生活していますが、すべての物質は酸、中性物質、アルカリに分けることができます。酸が示す性質を「酸性」、アルカリが示す性質を「アルカリ性」、中性物質が示す物質を「中性」と呼びます。そして、酸性、アルカリ性には強弱があり、強いものから弱いものまでいろいろありますが、pHはこの酸性、アルカリ性の強さを表す指標です。
小学校の理科の実験では、さまざまな溶液につけたリトマス試験紙の色が酸性では赤に、アルカリ性では青にというように変化するのを確かめたと思います。
ちなみに、以前はドイツ語の「ペーハー」と読むと習いましたが、現在では、国際単位系に合わせて英語の「ピーエイチ」と読むようになり、教科書にもそのように記載されるようになりました。
肉をマリネ処理すると柔らかくなる理由
肉を美味しく、柔らかく調理するために「マリネ処理」をすることがあります。実はこれにもpHが深く関わっているのです。
肉の種類にもよりますが、生肉はほぼ中性、つまりpHは7.0付近です。タンパク質にはプラスイオンとマイナスイオンが存在し、その個数は肉を調理する液体のpHによって変化します。そして、肉の中でプラスイオンとマイナスイオンの総個数が等しくなった状態を「等電点」といい、その状態の肉のpHは5.5になります。
肉のpHがこの等電点に近ければ近いほど、プラスイオンとマイナスイオンが引き付け合い、タンパク分子間の引力が強まります。そのため、肉の水分が絞り出されて、パサつく原因となるのです。
そこで、レモン汁や食酢、ワインなど酸性の液体に肉を浸けるマリネ処理をし、pHを5.5より下げる(酸性に傾ける)と、タンパク質同士の収縮が抑えられ、しっとりと柔らかい肉に調理することができるのです。
逆に、重曹などを用いてpHを上げる(アルカリ性に傾ける)ことでも同様の原理で肉の保水性を高めることが可能です。
「エナメル質臨界pH」を下回ると歯が溶け始める
私たちの健康もpHと深く関わっています。たとえば、糖分の多いジュース、特に炭酸飲料ばかり口にしていると虫歯になりやすいといわれます。
通常、口の中は中性に保たれていますが、食事をすると口内にいる虫歯菌が食べかすを代謝して酸を作るなどしてpHが下がります。「エナメル質臨界pH」という言葉を耳にしたことがある人もいるかもしれませんが、これは歯の表面を覆っているエナメル質が酸によって溶け出すpHを指し、その値は約5.5です。口の中のpHがこれより下がると、歯からカルシウムやリンが溶け出し、虫歯の原因となります。これを「脱灰」といいます。







