【 実際の相談事例 】
 社会人になりたての頃に道を歩いていたら、前を歩いていた男子学生から「あいつ、デブじゃね? 見ろよ、スーツなんてパツパツだぜ!」と笑われたんです。
 相手は子どもだし、単にふざけていただけなのかもしれないですけど。
 それでも、どうしてもその時言われた言葉が忘れられなくて……。
 もう3年も前のことなのに、ふと思い出して苦しくなってしまうんです。
 しょっちゅう思い出すというわけではないですけど、いったん思い出してしまうと、そのあとはもうずっと頭の中で「デブ」「スーツなんてパツパツ」がリフレインして止まらなくなっちゃって、ひどい時はパニック状態になってしまうこともあります。
 この間は会議中にそうなってしまって、周りの人にも心配をかけてしまいました。
 過去の嫌な言葉を忘れる方法って、何かあるんでしょうか?

「事実を指摘されたから傷ついたのだ」「自分が気にしていることを指摘されたからショックを受けたのだ」という考え方もありますが、今回の場合は違います。

 誰かから言われた言葉が事実ではなくても、特段気にしていることではなくても、心が傷つくことは十分にあるのです。

 実際のところ、Uさんの体形は「デブ」とはほど遠く、ごく標準的です。
 Uさん自身もそれは認識していますし、特に体形にコンプレックスは抱いていないといいます。
 これまでにほかの誰かから、体形を指摘するようなことを言われたこともありませんでした。

 このようなケースにおいて、過去に言われた心ない言葉を忘れる方法の鍵は「思い出した時に出てくる感情」にあります。

そこには「思いもしない感情」が
隠されている

 リフレインする言葉がある場合というのは、自分の本当の感情をうまく出せていないことが多いのです。

 思い出した時に出てくる感情は、ひとりひとり違います。

 怒りが出る人がいれば、悲しみが出る人、落ち込む人、突然のことに混乱して苦しくなったり、何も考えられなくなったりしてしまう人もいます。
 いずれも出てきた感情に、良い・悪いはありませんので、安心してくださいね。

 さて。相談者Uさんは、「突然のことに混乱して苦しくなる」という形で、感情が表出していました。

 心ない言葉をぶつけられた時、Uさんは「なぜそんなことを言われたのか」「見ず知らずの学生がなぜそんなひどいことを言うのか」と、半ばパニック状態になって何も考えられなくなってしまったといいます。
 そして3年たった今も、思い出しては「その時と同じように混乱する」ことを繰り返している自分自身に気がつきました。

 Uさんの場合は、本当の感情として隠されていたのが「怒り」でした。