「見ず知らずの学生が、なぜそんなひどいことを言うのか」という混乱についてより詳しく掘り下げてみたところ、「腹が立った」「人に言うべき言葉ではない」といった怒りの感情があることに気がついたのです。

なぜ、それは
「怒り」だったのか?

 聞くと、Uさんは子どもの頃、しょっちゅう怒る父親が苦手で「自分はあんなふうには、ならない」「怒るのはいけないことだ」という思いを強くしていったようです。
 その結果、怒りを感じるべき場面であっても「怒り」を抑え込み、別の感情を表に出すようになってしまっていました。

 本当は「怒り」を感じていたのだと知ったUさんは、かなりスッキリした様子でした。

 それから数か月、半年とたつうちに、思い出す頻度は激減し、思い出したとしても、今までのようにパニックになるようなことはなくなりました。

脳内リフレインの頻度を
根本的に減らす方法

 この事例からも分かる通り、リフレインの頻度を減らすために重要なのは、「混乱する」に隠された自分の本当の感情を知ることです。

 当時は気がつけなかった感情を自覚できるようになると、リフレインする頻度が減ります。
 さらには、リフレインしたとしても、今までほど心身に影響が出なくなります。

 なぜこのようなことが起こるかというと、脳には「よく分からないこと」を繰り返し考え続け、なんとかして「分かる」にもっていこうとする習性があるからです。

 1ピースだけ埋まっていないパズルが気になるように、「チョコレー○」など空白部分を埋めたくなるように……自分の本当の感情を知らない状況というのは、脳にとって「よく分からないもの」が残ったままの不快な状態なのです。
 この不快な状態をなんとかしようとして、嫌な記憶がリフレインしてしまいます。

 でも、自分の本当の感情に気づくことができれば、「よく分からないこと」が「分かる」に変わります。
 すると、その記憶を思い出す頻度そのものが減るというわけです。

 あなたが過去に言われた心ない言葉が頭の中でリフレインする時には、どのような感情が出てきますか?

 もしかすると「それ以外の感情」が、隠されているかもしれません。
 Uさんのように別の感情が隠れていないか、探してみてくださいね。

Poche(ポッシュ)
精神科クリニックに併設のカウンセリングルームで10年以上、心理カウンセラーとして勤務した後、独立。現在は人間関係、親子問題、機能不全家族専門カウンセラーとしてメールでのカウンセリングを中心に活動。メールでのカウンセリング、対面カウンセリングともにいつも予約がいっぱいで、現在も数か月待ちの超人気カウンセラー。
著書に『あなたはもう、自分のために生きていい』(ダイヤモンド社)などがある。最新刊は『悪いのは、あなたじゃない』(ダイヤモンド社)。X(旧Twitter)@Poche77085714

※本稿は、Poche著『悪いのは、あなたじゃない』(ダイヤモンド社)から再構成したものです。