先の施政方針演説において安倍晋三首相は、“選挙制度改革”についてこう呼びかけた。

「議員定数の削減や、選挙制度の見直しについても、各党各会派で話し合い、しっかりと結論を出していこうではありませんか」

 これを受けて自民党は、衆議院の比例区定数を30削減する改革案をまとめる方針を固めたと報道されている。

 現在の総定数は480。そのうち300が小選挙区で、180が比例区。自民党案では、小選挙区はそのまま300で、比例区が150議席となる。

 ただ、自民党は少数政党、特に公明党に配慮して150のうちの30議席を、少数政党に有利となる配分案を検討するらしい。最終案は公明党の同意を得て3月中には発表される見通しだ。

 これではあまりにも拙速だと言わざるを得ない。

選挙制度改革に対する
全く異質の「3つの要請」とは

 そもそも今回の選挙制度改革には3つの全く異質な要請がある。

 (1)昨年末、解散直前の「0増5減」の法改正は、一票の格差が“違憲状態”にあるとの最高裁の警告を受けたもの。

 違憲状態のまま断行された今回の総選挙には早速、3月6日に東京高裁が「違憲状態」からさらに踏み込み、ついに「憲法違反」の判決を下した。選挙自体は有効とされたものの、憲法違反の総選挙で選出された政治家はその正当性も薄められてしまった。そして早期の解散・総選挙によって信任を得る重大な政治的道義的責任が課せられたのである。

 いずれにしろ、違憲状態で選出された衆議院議員には、早期の解散・総選挙で信任を得る重大な政治的・道義的責任がある。

 (2)消費税増税の前に政治と行政が率先して「身を切る」一環として議員定数を削減するというもの。

 これは、野田佳彦前首相が声高に叫び、「0増5減」と共に、自民、公明との3党改革案の方向づけをした。

 要するに、定数削減は、歳出削減を目標とするもの。