頑丈らしい3Dプリンター住宅
まず、3Dプリンターが古今東西でイノベーション無双を行っていて、食用培養肉や移植手術用の骨の出力までするという話を聞き、すべてがまだ実用化の段階に至っているわけではないにしろ、かつての近未来がついに「現在」へと迫りつつあるのだと感慨深い。
3Dプリンター住宅は、業務用3Dプリンターを使って造るらしく、筆者は、その響きから、さも未来感あふれるデザインで中空にレーザーをビーッと照射してみるみるうちに住宅を描画していくようなSF映画的絵づらを想像していたが、もう少しなじみのある「鉄でできた機械」というたたずまいで安心した(参考)。
アームの先端から下にコンクリートをニューッと垂らして、ソフトクリームのようにそれを上へと重ねて壁にするのである。そしていくつかのパーツを現場に持っていって組み合わせて完成となるのだが、今回のセレンディクスの戸建て住宅は最短2日でできるというのが驚きである。
同社から発表された「フジツボモデル」というタイプは広さ50平方メートル、鉄骨とコンクリートでできていて、水回りも完備。建築基準法に準拠し、耐震性・断熱性も申し分ないとのことで550万円となる。
また、同社からはグランピング(※)などの展開に向けた10平方メートル・330万円の「スフィアモデル」がすでにリリースされていて、今後100平方メートルのモデルの発表を予定しているそうである。(※)豪華(グラマラス)なキャンプ、を意味する造語。
早速問い合わせが殺到しているようで、すぐ動かせる金、および新しいテクノロジーに真っ先に踏み入っていく勇気のない筆者はその様子を見守るのみだが、やはり「新築戸建てのマイホーム」という選択肢には、前を向かせてくれる希望の光があり、問い合わせに動いている人たちがまぶしく感じられる。
しかもポイントはその廉価性であり、よりカジュアルに新築戸建てが購入できるようになれば、従来より選択肢が増えて社会のワクワク度も増すに相違ない。
話題の「フジツボモデル」は、外壁がいかにも「コンクリートを3Dプリンターでネリネリ出して重ねていきました」という特徴的なルックスになっていて、この点好き嫌いが分かれそうだ。しかし、コンクリートの積層痕は3Dプリンター出力によるものだということを示すためにあえて残していて、あとを残さずなめらかに仕上げる技術もあるとのことである。