英語をたくさん勉強したのに、いざとなると全く言葉が出てこない――そんな人に読んでほしい1冊が『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』だ。「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、日本語を介さずに瞬時に即答する「英語の反射神経」を鍛えることができる。実践的なスピーキング力を養うための最適な1冊だ。本稿では著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に「リスニング力向上の方法」について話を聞いた。

日本にいてもネイティブの英語が聞こえるようになる3つのトレーニングPhoto: Adobe Stock

(1)ディクテーションで「聞き取れない音」に気づく

――英語のリスニング力を向上させるには、どんな学習法が有効でしょうか?

森秀夫(以下、森):まずは「聞き取れる音」と「聞き取れない音」があることに気づくことです。

 具体的には、短めのモノローグやダイアローグを聞いて、ディクテーションします。

 ディクテーションとは「英語を聞いてすべてを書き取る」ことです。

 何十回も同じ英語を聞いて書き取るのです。

 時間はかかりますが、自分が聞き取れていない音に気づくことができます。

 NHKのラジオ番組「中学生の基礎英語」や「ラジオ英会話」などは、よい教材になります。

 1週間に1つのパートでもよいので、こういった教材でディクテーションすることをお勧めします。

(2)音読でリスニング力向上を図る

――ディクテーションのほかに、何か効果的な学習法はありますか?

:音読です。音読をすると、発音だけでなくリスニング力も向上します。

 音読というと、1~2回の音読練習をイメージするかもしれません。

 しかし、ネイティブの発音に近づくためには、何十回も何百回も音読することが必要です。

 繰り返し音読することでしか、英語特有のリズムやアクセントは身につきません。

 また、前回の記事で説明したように、英語は「内容語」と「機能語」の2種類に分けられます。

 内容語とは、「動詞、名詞、形容詞、副詞などのように意味を伝える」ものです。

 一方、機能語とは、「代名詞、前置詞、接続詞などのように文法的な機能をもつ」ものです。

 英語は意味を伝えるためのものです。そのため、意味を伝える内容語は強く発音され、機能語は弱く、短く発音される傾向があるのです。

 音読する際には、内容語と機能語を意識して発音してみてください。

 そうすることで英語特有のリズムとアクセントを身につけることができます。

 しっかり英語らしく発音できるようになれば、聞き取る力も伸びていきます。

――音読する際に、ほかに心がけた方がいいことはありますか?

:これも、前回の記事で触れたことですが、英語特有の発音のルールを意識して音読するように心がけてください。

――連結、同化、脱落ですよね。

:そのとおりです。それぞれのルールを意識して発音することで、英語らしい発音を身につけることができます。

(3)自分のレベルに合った教材を繰り返し使う

――音読で注意すべきことは何かほかにありますか?

:音読の教材を選ぶ際には注意が必要です。

 まず、読んで内容を理解できる英語教材に絞ることです。

 内容が理解できない教材を音読しても意味がありません。

 難易度の高い教材を使うと、未習の英単語、なじみの薄いトピック、複雑な文法などが理由で内容を理解できません。

 その結果、英語らしい発音を身につけてリスニング力を伸ばすという本来の目的が達成できないのです。

リスニング力は必ず伸びる

:一定の発音のルールに従って、自分の英語力に合った教材で、繰り返し音読する練習をしてみてください。

 そうすると、聞こえなかった英語が聞こえ、必ずリスニング力が伸びていきます。

 自分で正しく発音できる英語は、必ず聞き取ることができるようになるからです。

 ディクテーションと音読をやり続けるには、かなりの時間と努力を必要とします。しかしその時間と努力は、学習者の皆さんを裏切ることはありません。