英語をたくさん勉強したのに、いざとなると全く言葉が出てこない――そんな人に読んでほしい1冊が『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』だ。「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、日本語を介さずに瞬時に即答する「英語の反射神経」を鍛えることができる。実践的なスピーキング力を養うための最適な1冊だ。本稿では著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に「ネイティブの英語を聞き取れない3つの理由」と「リスニング力向上の方法」について話を聞いた。
聞き流しでは、リスニング力が上がらない
――「ネイティブの英語を聞き流しているうちに、スピードに慣れて聞き取れるようになる」ということを見聞きしますが、本当でしょうか?
森秀夫(以下、森):そう簡単ではありません。わからない英語は、何回聞いてもわかるようにはなりません。
ネイティブの英語を聞き取れない理由は、いくつかあります。
――それらの理由について教えてください。
(1)英単語が理由で英語が聞き取れない
森:まず、英単語の問題です。
学習したことのない単語に出くわした場合には、何回聞いても理解できるようにはなりません。
例えば、ある中学の英語教科書には、grumpy「不機嫌な」という英単語が出てきます。
「あなたが私をイライラさせる」
She is grumpy in the morning.
「彼女は、朝は機嫌が悪い」
Don’t get grumpy.
「イライラするな」
などと日常でも使われるものです。
しかし、意味が分からなければ、この部分は聞き取ることができないでしょう。
また、複数の意味を持つ単語もあるため、学習した意味と異なる意味で使われていると、英単語が聞き取れても、意味が理解できない場合があります。
例えば、
B: Congratulations.
という会話を聞いたときに、expect「期待する」という意味しか知らなければ、会話の内容を十分には理解できません。
be expectingに「妊娠している」という意味があることを知らないと、理解できないということになります。
さらに、カタカナ英語が英語のリスニングを邪魔していることもあります。
――それは、どういうことでしょうか?
森:「バタン」と聞いて、buttonの英単語を思い浮かべるでしょうか。
button「ボタン」の発音は、バタンに近い音になりますので、リスニングでは聞き取れない可能性があります。
そのため、英単語を覚えるときに発音を一緒に覚えないと、リスニングでは、覚えた英単語が役に立たないことになります。
(2)英語特有の発音のルールを知らない
――そのほかにも、リスニングに苦手意識をもってしまう原因はありますか?
森:英語では、文として続けて発音されると一定のルールに従って発音に変化が起きます。
英語が短く発音されたり、場合によっては、消えてしまったりする音があることを知らないため、リスニングを苦手とする人がいます。
英語のスピードが速いのではなく、発音されていない音があることに気づくことができないのです。
知っている英単語でも聞き取れない変化が起きています。
――どのようなルールがありますか?
ここでは、「連結」、「同化」、「脱落」についてお話します。
ルール1:連結
連結は、英単語の最後の子音と、次の英単語の母音がくっついて連続した発音になることです。
例えば、“an apple”は1つ1つ発音すると「アン アップル」ですが、「アナップル」のように発音されます。
“join us”は「ジョイン アス」ですが、「ジョイナス」のように発音されます。
ルール2:同化
同化は、2つの英単語の子音がくっついて別の音に変化することです。
例えば、“Would you~?”「ウッド ユー」が「ウッジュ―」に、“Did you~?”「ディッド ユー」が「ディッジュー」のように発音されます。
ルール3:脱落
脱落は、2つの英単語で子音が連続する場合に、前の単語の子音が脱落して発音されないことです。
“Good night”は「グッド ナイト」が「グッナイト」のように発音されます。
これらの例のように、英単語帳などで学んだ単語の発音と比べると、変化して発音されることがあるために、リスニングが難しくなっているのです。
(3)「強く発音される品詞」と「弱く発音される品詞」がある
――ひとつひとつの単語の発音だけでなく、単語が連続したときの発音の変化を知っておく必要があるのですね。
森:その通りです。加えて、文章の中で「はっきりとは発音されない品詞」を知っておくといいと思います。
英語は、「内容語」と「機能語」の2種類に分類されます。
内容語とは「動詞、名詞、形容詞、副詞などのように意味を伝える」ものです。
一方、機能語とは「代名詞、前置詞、接続詞などのように文法的な機能をもつ」ものです。
英語は意味を伝えるためのものです。そのため、意味を伝える内容語は強く発音され、機能語は弱く発音される傾向にあるのです。
例えば、andやthatなどは、文の中では、「アンド」や「ザッツ」と強く発音されないので、聞き取りにくいのです。
このような「弱く発音される傾向にある品詞」を理解しておくことも、リスニング力向上のためには必要です。