横断歩道を渡る群衆写真はイメージです Photo:PIXTA

日本銀行は9月22日、金融緩和策の継続を決めた。植田和男総裁は政策を変更する際の判断材料として、「賃金の上昇が最も重要だ」と説明。一方、経団連の十倉雅和会長は、2024年春闘について「ぜひ4%を超えたい」と表明している。私たちの給料は上がるのだろうか?(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

賃上げが「本物」になるかは
日本企業の業績にかかっている

 ここへ来て、徐々にではあるがわが国の賃金に上昇の兆しが出始めている。2023年春闘の平均賃上げ率は3.58%だった。1993年(3.90%の賃上げ率)以来の高水準だ。その背景には、経済全体として人手不足が深刻化していることがある。必要な労働力を確保するため、賃金を上げざるを得なくなっているのである。

 人手不足はわが国だけの問題ではなく、主要な先進国に共通の課題でもある。転職する人が多い米国では、より高い賃金を提示して人員を確保する企業は増えた。2023年8月の平均時給の伸び率は、前年同月比で4%と高かった。それだけ人手の確保が大変であることを物語っている。

 1990年以降、わが国の賃金は停滞してきた。しかし今、労働市場は間違いなく変化しつつある。インフレ気味の経済状況に加えて、生産労働人口は減少し、人手不足は今後も一段と深刻化する。企業業績がしっかりした足取りを維持できれば、わが国の賃上げは少しずつ本物になっていくかもしれない。