「LINE」感覚で顧客とのコミュニケーションを深める

 この「WeChatカスタマーサービス」の仕組みと手順を、あなたがあるブランドのカスタマーサポート部門の担当者だとして、その商品に興味を持っている見込み顧客のAさんとのやりとりを通じて説明してみます。

 まず、自社ブランドのECサイトで「問い合わせ」のボタンを押したAさんに、「WeChatカスタマーサービス」に招待するQRコードが自動で送られます。それを読み込んだAさんがカスタマーサポートのアカウントにアクセスすることで、担当者のあなたとやりとりすることができます。

 繰り返しますが、このときAさんは自分のWeChatアカウントを登録する必要はありません。「WeChatカスタマーサービス」上では、LINEの感覚でAさんから商品のサイズや在庫などに関する質問を受けます。基本的な問い合わせはチャットボットが自動で応答し、細かい質問に対してはオペレーターのあなたがブルートゥースイヤホンで回答します。動画や電話でやりとりすることもできます。

「WeChatカスタマーサービス」ではオープンIDも発行されるので、あなたはAさんへのプリセールスとしてニックネームやアバターを取得することをすすめたり、あらかじめブランドのファングループに参加を呼びかけることもできます。

 こうして、見込み顧客であるAさんとのコミュニケーションを深め、コンバージョン(成約)の確度を高めることができます。

 こういった成約前のコミュニケーションや顧客動向の記録は、タイムラインに残るのはもちろん、すべてメッセージや音声や映像で記録されるので、オペレーターのあなたも見込み顧客のAさんも、過去の質問や相談などをいつでも見返すことができます。

 あなたのAさんに対する親身な接客の結果、晴れて、Aさんと商品購入の成約にこぎつけることができました。その後も、商品の使用方法、アフターケア、新商品に関する情報など、引き続きAさんとはWeChat上でコミュニケーションをとりながら顧客エンゲージメントを高めていきます。カスタマーサポートに対する満足度調査なども、WeChat上で依頼することができます。

 また、WeChat Payの決済データや信用スコアともリンクしているので、Aさんのこれまでの消費動向を把握・分析し、ロイヤリティを定量的に評価・算出することができます。

 そのロイヤリティをもとに顧客トリアージを行い、新商品を紹介する、アップセル・クロスセルなどの提案を行う、オフラインイベントに招待するなど、顧客のナーチャリング(育成)に活用することができます。