受付も「QRコードだけ」の時代に

 このように、「WeChatカスタマーサービス」では、気軽なコミュニケーションができるメッセージアプリの利点を活かして、問い合わせから購入後のアフターフォローまで一連のカスタマージャーニーを通じて、顧客とのコミュニケーションを深めることができます。

 しかも、企業が負担するコストは、オペレーターとスマートフォンのみ。もはやコールセンターの拠点を持つ必要はなく、企業にとっては顧客エンゲージメントの向上とコストダウンを同時に達成することができます。それこそ在宅勤務でも対応が可能なので、子育て中の主婦などの潜在的な労働力の活用にもつながるでしょう。

 この「WeChatカスタマーサービス」のように、今後は企業と顧客とのタッチポイントが「スマホファースト」にシフトすることによって、顧客満足を維持しながら(むしろ向上させながら)、システムがより簡素化されていくでしょう。

 たとえば、大企業のオフィスビルにある受付なども、QRコードひとつで済むようになります。よくある商談のシーンを考えてみましょう。

 A社の担当者が訪問先のB社とのアポイントメントをとると、B社からA社の担当者にQRコードが送られてきます。商談当日、A社の担当者がオフィスの近くまで来ると、位置情報を感知し自動でB社の担当者のスマートフォンにプッシュ通知が届きます。

 A社の担当者がオフィスに入ると、見慣れた総合受付はありません。受付用のQRコードが貼ってあり、そのQRコードをスマホで読み込むと、WeChatなどに自動連携されます。するとセキュリティ領域が解錠され、目的の会議室のフロアへと向かうことができます。

 スマートフォンには会議室までの案内とQRコードが表示され、駅の自動改札を通るように、この認証されたQRでセキュリティゲートを通ります。移動の途中の自販機のところで、「お飲み物はいかがですか」とスマホにメッセージが流れ、表示されているQRコードで好きなものを無料で注文することができます。

 会議室のドアもQRコードを使って解錠します。中にはすでにA社の担当者が待っており、スムーズに商談がスタート。会議が定刻通り行われたか、誰が中にいるかなども自動的にデータ化されます。

 このようなシーンは私の妄想ではなく、実際に体験したことにもとづいています。まぎれもなく、最先端のテック企業が生み出した現実です。

 商談の事例のように、「ハード」はスマートフォン1台で、あとはアプリやQRコードといったトリガーさえあれば、サービスという「ソフト」を提供することができるのです。

 スマートフォンは、私たちが気づかないポテンシャルをまだ秘めている─そのことを、これらの最新テック企業の事例は示唆してくれます。