「タクシー料金の定価が分からない」こそ、中国配車アプリ・ディディの強さの秘密である理由写真はイメージです Photo:PIXTA

世界最大級の交通プラットフォームである「ディディ」、中国のライドシェア市場は9割超と圧倒的な存在です。ディディ成功の秘訣は何だったのでしょうか? 本稿では、ディディのビジネスモデルについて紹介します。

AIによって加速するダイナミック・プライシングの波

 時期や時間帯、予約のタイミングなど、商品やサービスの需要の多寡に応じて価格を変動させる仕組みを「ダイナミック・プライシング(Dynamic Pricing:変動料金制)」といいます。

 ダイナミック・プライシング、と聞くと近年のトレンドのように聞こえますが、じつは古くからある価格設定モデルで、特にホテルや航空券などにおいては伝統的にダイナミック・プライシングを採用しています。

 ホテルの価格は、週末は平日にくらべて2、3割高く、ゴールデンウィークやお盆休み、年末年始などはさらに2倍近い価格になることもあります。航空券も同様で、季節に応じて価格を変動させており、さらに早朝や深夜は比較的安くなります。「早割」など、予約したタイミングによっても価格差を設けています。

 ホテルや航空券に共通するのは、供給量があらかじめ決まっており、物理的に増やせないこと。したがって、需要が高まる時期や時間帯には価格を上げ、需要が少ない時期には稼働率を高めるために価格を下げる、と繁閑に応じた価格調整によって収益の最適化を図っています。

 そのダイナミック・プライシングですが、近年ではこういったジャンルを超えて、スポーツ観戦やアーティストのライブチケットから鉄道、電力などの生活に身近なインフラまで幅広く検討、または導入されています。

 国土交通省も、2022年7月に鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会で、中間取りまとめを公表し、鉄道事業者の経営環境や利用ニーズに応じて運賃設定の自由度を高める必要性などに言及しています。

 ダイナミック・プライシングが普及しつつある背景には、AIのアルゴリズム解析技術の発達によって需要予測の精度が高まったことが挙げられます。たとえば、コンサートやスポーツ観戦などにおいては、過去のチケット購入履歴データから、ディープラーニングで価格を個別に設定することが可能になっています。

 こうした過去の購入履歴・予約履歴から需要予測を行う伝統的なダイナミック・プライシングの形式に加え、近年、新たなファクターによって価格を変動させるダイナミック・プライシングが登場しました。そのファクターとは「人」です。

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