「初めて担当になった会社に訪問することになったので、手土産を用意しようと新人仲間に相談しましたが、みんな『手土産?なにそれ?』という感じでした」

 一方、もう先輩になったコロナ世代の卒業生からも、新入社員についてこんな苦言が……。

「『教えられたらメモをとれ』と言っているのですが、メモをとらない。伝言を頼んでも伝わっていない。本人を叱ったら、伝えたことも覚えていなかった」

「マスク姿を見て研修が終わり、マスクを外して実際の現場にくると、誰が誰だかわからない」

自宅に帰ってお昼を
食べているから忙しい?

 そして、私にとって衝撃的だったのは、ある営業系の会社の先輩の話でした。

「新人だから目茶苦茶忙しそうで、手伝いたくても何を手伝っていいかわからない。『昼休みまで働いたら身体に毒だよ』と慰めたつもりだったんですが、それに対する答えが怖かったです。なんとその新人、『昼休みは仕事で忙しいのではなく、自宅に帰ってお昼をつくって食べているからなんです』と」

 これは、コロナ禍での孤食の習慣をベースとする健康志向なのか、それともプライベート重視の気持ちが強すぎるのか……。

 どこの会社でも、どの年代でも世代間ギャップはあるものです。ここで紹介した事例も、コロナ世代の若者だからという理由だけで説明できるものではないかもしれません。しかし、最近はちょっと位相が違います。

 そろそろ人事担当者やメンターの皆さんは、そのことに気づき、リモートだけで育った社員とそうでない社員とで別の教育メニューを考え、より意識してコミュニケーション能力を鍛えた方がいいかもしれません。

 やはり、会社は人がつくるもの。自分の経験からも「人は石垣、人は城」。コミュニケーションがとれず、一体感のない組織は長続きも繁栄もしないことは、時代や場所を問わず真実だと思うからです。

(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)