89年から2代目司会者を務める、オール阪神氏89年から2代目司会者を務める、オール阪神氏(撮影:大森泉)

苦境が続くテレビ業界で、まもなく放送開始から40年目を迎え、いまだ熱狂的なファンを生み出し続ける孤高の釣り番組『ビッグ・フィッシング』(サンテレビジョン)。この番組でMCを務めるオール阪神氏は、「この番組のおかげで、今では若い子たちからの認知度は島田紳助さんより高くて驚きました」と、うれしそうに笑う。関西ローカルであり、しかも釣り番組という専門性が高いコンテンツにもかかわらず、なぜ若い世代にも認知されているのか。その理由を探るため、番組関係者たちに話を聞いた。(コピーライター 橋本未来)

「あなたが行く釣りにカメラも同行させてください」

 1984年、当時乱立していた釣り番組では考えられない画期的な企画を打ち出す『ビッグ・フィッシング』はスタートした。釣り名人ではなく一般の釣り人をメインに据え、収録日当日に放送する“撮って出し”形式で情報の鮮度にもこだわるなど、異例ずくめの内容であった。

 番組を立ち上げた初代プロデューサーの小松伸氏は当時を振り返る。

「どの局でもやっていない企画を念頭に置きながら考え抜きました。視聴範囲が限られる、関西ローカルという弱点も逆手に取り、関西エリアを中心に情報を掘り下げようと。とにかく、ローカルに徹することが企画の軸になりましたね」

 この企画の実現に大きく関わったのが、現在も制作と出演に携わる今井浩次氏だ。当時、釣り専門誌『週刊釣りサンデー』の編集長を務めていた今井氏は、このときの思い出を語ってくれた。

「コンセプトは、“あなたが行く釣りにカメラも同行させてください”というもので、一般の釣り人に密着する企画になりました。1時間の中でロケVTRを3本も放送するので、一般の釣り人の方が都合はいいんです。すぐにカメラを回して撮れるだけ撮って編集ができるので。誰でもええと言えば、聞こえは悪いですが、制作上の効率は一般人の方がいいんですわ(笑)。しかも、一般の人はカメラが回ると自然と頑張って臨場感も出るしね」

 これまでにないドキュメンタリーのようなリアルさを追求した番組は、釣り人から好評を博し、こうした番組では大成功ともいえる視聴率2桁に迫る数字を獲得した。

 番組人気が高まっていく中で、オール阪神氏もファンの一人となったという。そしていつしか、番組に関わりたいという思いが高まり、「ある秘策を実行した」と言う。