購入・売却・保有において持家はコストがかかる。それは還付される税金との差し引きで10%くらいになる。10年で前述の含み益が15%になるので、コストを回収して余りある。相場が上下動しなければ損はしないことになるし、上昇すればその分は売却時に資産運用したかのように手元に戻ってくる。賃貸だと、賃料は物件価格の3~4%なので、10年で物件価格の30~40%を必ず失うことになる。
そう考えると、相場上昇局面ではどんな世帯構成でも家を買っておいた方が、賃貸より断然有利になる。もし下がり始めたときには急落はないので、気づいたら売ればいいし、その際に筆者が主宰するマンション資産査定サイト「住まいサーフィン」の会員向けにアナウンスすることを約束している。
結婚や出産に合わせた
マイホーム購入は合理的でない
この前提からすると、結婚や出産といった自分のライフイベントに合わせて家を購入するのは、合理的な判断ではないことがわかる。できれば、結婚する前の独身時代から買った方がいいし、結婚したら住み替えし、子どもが産まれる前に住み替えしてもいい。
一方、結婚・出産以上にリスク管理をしなければならないのは、離婚である。日本では「離婚件数÷婚姻件数」は約35%となる。離婚したら、持ち家は売るしか方法がない。折半もできないし、プレゼントすることもできない。物件を売っても住宅ローンを全額返済できない場合、自分の貯金から返済しなければならなくなる。こうした経験をした人は、その後、賃貸派になりやすい。
しかし、物件に資産性があれば離婚することになっても何の心配も要らない。売って、資産を持ち分に応じて分割するだけだからだ。
これらのことから、家を決める際にはその資産性を理解しておいた方がいい。それを理解した上で、リスクを許容し、自分が好きな街や物件を選べばいいのだ。資産性を知った上で、「自分がウキウキ・ワクワクするような物件を購入してください」というのが、私が相談を受けた際にいつもアドバイスしていることだ。
(スタイルアクト(株)代表取締役 沖 有人)