超ミニマル・ライフ3原則

 超ミニマル・ライフ3原則とは何か

【超ミニマル・ライフ3原則】
①体・脳・心の負担を最小化して「パフォーマンス」を最大化する
②仕事と家事を超時短して「自由時間」を最大化する
③お金・仕事・人間関係の不安をなくして「幸福度」を最大化する

 本連載を通してこの3原則を体得できたなら、「本当に大切なこと」「心から愛すること」「人生で成し遂げたいこと」、つまりあなたの「夢」に一点集中できるようになる。 さらに、他者にも優しくなれて、環境負荷を小さくできるという壮大なオマケも付いてくる。

選ぶことは手放すこと

 ただし、最初に理解してほしい絶対ルールがある。

「選ぶことは手放すこと」

 人が何かを得る時、必ず別の何かを手放さないといけない。

 だが、あなたは「渇望」を満たそうと、あらゆることを手に入れては疲弊し、不安に襲われながらこんな人生を夢見る。

「Live Big, Dream Big──大きく生活し、夢も大きく」

 これは──日本に0.16%しかいない(※6)──超富裕層の家に生まれない限り実現不可能なのに、叶わぬ夢を追い続けながら、大切なことを見失ったまま人生を終えてしまう。

 まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」である。

 誰もが知る真理を突いたことわざだが、本連載ではことあるごとに、こういった「原理」に立ち返る。

 それは──現代人がどうやっても抗(あらが)えない──先人の不変的な叡智(えいち)、人間の本質、自然の摂理、ヒトという生物の本能といった鉄則のこと。

現代文明が確立したのは、たった「数秒前」の出来事

 人類史250万年において(※7)、約1万2000年前の農耕革命までの99.5%の期間を、空腹や欠乏に苦しみながら狩猟採集生活を送り──産業革命の200年前までの99.9%の期間を、自然の循環から逸脱せずに暮らしていた。

 この事実を、わかりやすい比喩で単純化してみよう。

 我々は、「昨日=狩猟採集時代」まで危険な荒野を移動しながらサバイブし、わずか「数時間前=農耕革命」から定住して安定的な食糧確保を実現し、「数分前=産業革命」からやっと物資的な豊かさを得たということになる。

 さらに──生活革命を起こした電気や化学物質の普及は約100年前、ネットは約30年前、スマホは約10年前だから──現代文明が確立したのは、たった「数秒前」の出来事である。

 なのに我々のDNAは、狩猟・採集時代からほぼ変わっておらず(※8)、当時と同じ脳と体で現代社会を生きている。

狩猟生活こそが、真のミニマル・ライフ

 我々の心身は──便利すぎる都市空間、高速のネット世界、超情報化社会、過度な化学物質ではなく──「自然」にこそ最適化しているという事実を忘れないでほしい。

 そして、祖先が249万年近く営み、実は幸福度が高かったとされる(※8)狩猟生活こそが、真のミニマル・ライフだ。

 ただし、石器時代の生活に戻ろうなんて提案はしない。

現代のミニマル・ライフとは?

 本連載で直伝するのは、現代社会におけるミニマル・ライフだ。その目的は、人生の可能性を最高値まで引き出すことにある。

「余分や過剰」「必要以上や行きすぎ」を削ぎ落とした後に残された「原理」はどんな時も真実を教えてくれる。

 人生で迷った時──フェイクニュースや拡大思考の罠にハマることなく──人間本来の感覚を研ぎ澄ませて「原理」に回帰しながらも、最新科学とテクノロジーを追求し続ける姿勢こそ「超ミニマル・ライフ」の真髄だと、頭に入れておいていただきたい。

(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)

【参考文献】 ※1 Brent Heavener “Tiny House: Live Small, Dream Big” Clarkson Potter(2019)
※2 毎日新聞「日本のGDP、世界3位維持」(2023年4月26日)。過去には、米国に次ぐ2位まで登りつめ、超大国の中国に抜かれ現在にいたる
※3 A.H.マズロー『人間性の心理学──モチベーションとパーソナリティ』産能大出版部(1987)
※4 The United Nations「World Happiness Report 2022」
※5 有賀敦紀『選択のオーバーロード現象の再現性』日本心理学第15回大会(2017)
日本経済新聞『買うたび後悔、選択肢のワナ 豊富な品ぞろえは幸せか』(2022年1月23日)
※6 野村総合研究所「日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計」(2023年3月1日)
※7 地質学では、約250万年前の人類の祖先の誕生から、約1万2000年前の農耕革命までを「更新世」、農耕革命から今日までを「完新世」と時代区分する。産業革命以降に、人類の経済活動によって地球環境を急激に変容させた「人新世」という定義も、近年になって提案されている。筆者はこの言葉と、本書の主題とも言える「脱成長」という概念を、記録的なベストセラーとなった『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著・集英社新書)で学んだ
※8 ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』河出書房新社(2016)