韓国系らしきPCR無料検査センターでは勧誘行為も
Aさんは2022年にこのアルバイトをやるようになった。勤務地と往復する地下鉄の中でたまたまPCR無料検査センターについて検索すると、検査体制に対する利用者のクレームが多いことに気が付いたという。
「そのクレームは『こんな所でPCR検査やってんですか』『東京都の事業なのに、言葉遣いもいい加減な学生が検査を行っている』『ほぼ医療行為に近いのに、医療機関らしくない所でやっている』といったものでした。普通なら、清潔な場所で白衣を着用した人が検査するというイメージなだけに、初めて行く人の中にはびっくりする人もいたみたいです」
東京都は無料検査に関わる事業者として、医療機関、薬局、衛生検査所など“医療系”の事業に携わっていることを条件としている。ところが、Aさんが通っていたのは「医療系とはとても思えない感じの所」だったという。
「経営者は敬語を使える男性でしたが、短パンに素足、ピアスやネックレスといった格好で、見た目には安全性や衛生面を重視する医療系のイメージと程遠い感じでした」(Aさん)
別のPCR無料検査センターでアルバイトをしていたBさんも同じ見方をしていて、「私が通っていた所の経営者は、主に飲食業に従事している方でした。こうした業界からの参入もあるんだなあと不思議な感じがしました」と話している。事業者の中には、資格を持つ医療法人などと提携することで参入を果たしたところもあるようだ。
PCR検査、こんな所でもやっているのか――、別のPCR検査センターでアルバイトをしているCさんはそんなことを思った一人だ。
Cさん夫妻はJR総武線の大久保駅からほど近い所にPCR無料検査センターを見つけた。自分もアルバイトをしているという“同業の好奇心”から、中をのぞいてみようと雑居ビルの地下に向かって階段を下りていった。そこは飲食業の店舗をそのまま利用した検査センターであり、まったく医療に関わる事業に携わっているとは思えない雰囲気だったという。
Cさん夫妻が見たのは、見るからに暇そうな2人の男女だった。ユニフォームも着ていない私服姿の学生のような女性と、検査場の責任者らしき男性が韓国語でおしゃべりをしていた。
「そこで私たち夫婦は思わぬ勧誘に遭いました。何としてでも検査をやらせたいようで、『身分証を忘れたから今日はできない』と夫が断っても、『奥さんの身分証で大丈夫だから』としつこく誘われたのです」と振り返る。
普通ならば身分証がないとPCR検査を受けることができないし、少なくとも検査する側は、利用者に対し、最初の段階で東京都の在住かどうかをヒアリングしなくてはならない。こうした確認をしないのに検査を迫るというのはどういうことなのだろうか。
「違反行為をしながらも検査をさせたいというのは、検査件数が欲しいからなんです」とCさんは語る。
もちろん、管理が行き届くPCR検査センターもあった。Cさんのバイト先がまさにそうしたセンターで「ルールに従わなければ補助金が出ない可能性もあるという理由で、『身分証なし、症状ありは一切受け付けないように』と厳しく指導されました」と話している。