一般の釣り人を主役にして
番組づくりがユニークかつ効率的に!
「視聴できるエリアが限られているので、全国津々浦々のバラエティーに富んだ釣り情報をお届けできないんです。最初こそ悩みましたが、関西の人は関東の釣り情報を求めていないと気付いたんです。そこで、ローカルである弱みを逆手に取り、『ローカル情報に徹しよう』と決めました。それが、『ビッグ・フィッシング』の企画の軸になりました」(小松氏)
小松氏は、関西エリアに絞り込んだ企画を実現するため、釣り専門誌『週刊釣りサンデー』に企画協力を求めた。そのとき、同誌で編集長を務め、小松氏の相談に応じたのが、初回の放送から現在まで出演と制作に携わる今井浩次氏だ。
今井氏がスタッフと考えたコンセプトは、“あなたが行く釣りにカメラも同行させてください”というもの。当時の釣り番組に登場する釣り人は、釣具メーカーと契約する名人やインストラクターが大半だった。その常識を覆し、この番組では、一般の釣り人を主役に据え、視聴者目線から釣り情報を伝えることを企画の核とした。そのため、ドキュメンタリーのような臨場感を視聴者に感じてもらいながら、釣り情報を届けられると考えたのだ。
また、今井氏は長年、釣り専門誌を手掛けてきた経験から、別の狙いもあったという。
「番組初期は、1時間番組の中で3本のロケVTRを放送していました。一般の釣り人であれば、すぐにカメラを回して撮れるだけ撮って編集できました。誰でもええと言えば聞こえは悪いですが、制作上の効率は一般人の方がいいんです(笑)。しかも、一般の人はカメラが回っていると自然と頑張ってくれるので臨場感も出るし、後から番組も見てくれる。ほんで、家族や友達にも言うから、番組の宣伝にもなると思ったんです」
着実に番組の内容が固まっていく中で、今井氏は制作する上で次の条件を出した。
「一つは、ヤラセをやらない。見る人が見ればわかるので番組の信用問題になりますから。それと、使う道具や衣装に制約を作らない。特に、名人はスポンサーと契約してますので、特定のものしか使えなくなる。すると、いろいろな人に出てもらうのが難しい。それじゃあ、番組の幅が狭くなってしまうので、それはやめましょうと。そういうルールを作って、番組づくりがスタートしました」
関西ローカルの強みを生かし、キー局がやらないことやできないことに挑戦する。番組立ち上げ時から、他の釣り番組と差別化する意識を持っていたことが、独自性のあるコンテンツへと成長する布石となったのだろう。しかし、異端の番組だったからこそ、困難は数えきれないほどあったという。