指導者に必要なのは
成長を待つ度量

――監督として「結果が出るまで待つ」というのは難しいのではないでしょうか。

 私も最初は結果が出ないことにあせり、なかなか待てませんでした。

 待つことができるようになったのは、私が幼稚舎(慶応義塾の小学校過程)で教員をやっていて、子どもたちが6年間で人間らしくなっていく過程を何度か見てきたからだと思います。

 子どもたちを見ていると、一人ひとりが時間とともに着実に成長していく。教員に必要なのは、成長を待つ度量です。そうすると、いつの間にかできるようになっていく。

 教員は目の前で結果を出させようとするから、焦るし、待てなくなってしまうんです。高校を卒業しても、まだ18才ですからね。一方、企業となると、大人なので早く結果を出せと言うのはあるでしょうが、それでも時間は必要だと思います。

――野球部の監督をする上で、ご自身が筑波大学でコーチング論を学ばれたことも生かされているのでしょうか。

 筑波大学のコーチング論研究室は野球だけではなくて、相撲やフィギアスケートなどいろいろな競技の方が集まっている研究室だったので、それぞれが持っている常識が揺さぶられることが多々ありました。

 たとえば野球のウォーミングアップは全員いっしょのことをやりますが、個人競技からすれば、それはおかしくないかと。個人個人で体調は違うのだから、その人に合ったウォーミングアップがあるでしょうと。そりゃそうですよね。

 常識を疑うというのは、研究室で大きく学びましたね。それで余計に高校野球はダメだと思ってしまいました。