人材育成と勝利の
両立が必要な理由
野球はメジャースポーツとして成功してきた、野球がスポーツの王道だと、関わってきた人はみんな思っています。WBCでも優勝したし、日本の野球の指導方法は正しいと思いがちです。しかし、その意識を変えないと野球は変わっていきません。
野球選手を育成するという点では、日本の野球は悪くないでしょう。しかし野球部を出たとしても、ほとんどの人は野球以外で生きて行かなくてはなりません。野球選手になっても、そこである程度の年齢まで野球を続けられる人はほんの一握りです。
人材育成という面からいえば、言われたことだけやる、言われたことしかやらないという日本の野球は危ういと思いますね。野球をとった部分で何が残るか、人としての部分がすごく大事です。「野球を通じて人を育てる。しかし、それだけじゃなくて野球も強い」となった方がいい。
「人材育成を犠牲にしてでも勝利する」というのではなく、人材育成と勝利の両方をとることは可能ですし、それが今回、証明できたんじゃないかと思います。どちらも両立できることが必要じゃないでしょうか。
――企業も現在、業績という数字だけではなく、社会貢献や社員のライフワークバランスとの両立が求められています。仕事か家庭かみたいな二項対立では成り立たない、今の社会での生き方に森林監督の指導方法が指針になると思います。
欲張りなんですね、きっと。部員たちには、社会に出ても、仕事だけでいいとか家庭だけでいいとか趣味だけでいいとか、そうじゃなくてバランスを取りながら生きていくことを身につけてほしいと思います。
慶應義塾高校野球部監督。慶應義塾幼稚舎教諭。1973年生まれ。慶應義塾大学卒。大学では慶應義塾高校の大学生コーチを務める。卒業後、NTT勤務を経て、指導者を志し筑波大学大学院にてコーチングを学ぶ。慶應義塾幼稚舎教員をしながら、慶應義塾高校コーチ、助監督を経て、2015年8月から同校監督に就任。2023年夏の甲子園で全国制覇を果たす。
齊藤 三希子
エスエムオー株式会社 代表取締役
株式会社電通に入社後、電通総研への出向を経て、2005年に株式会社齊藤三希子事務所(後にエスエムオー株式会社に社名変更)を設立。「本物を未来に伝えていく」をパーパスとして掲げ、ものの本質的な価値を見据えたパーパス・ブランディングを日本でいち早く取り入れる。慶應義塾大学経済学部卒業。2021年7月、著書『PURPOSE BRANDING?「何をやるか?」ではなく「なぜやるか?」から考える』を出版。