新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は第一生命ホールディングス、かんぽ生命保険、T&Dホールディングスの「生命保険」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
不祥事の影響に苦しむはずの
かんぽ生命の利益が“爆増”
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の生命保険業界の3社。対象期間は2023年2~6月期の四半期(3社の対象期間はいずれも23年4~6月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・第一生命ホールディングス
増収率:3.9%(四半期の経常収益3兆34億円)
・かんぽ生命保険
増収率:マイナス0.9%(四半期の経常収益1兆5938億円)
・T&Dホールディングス
増収率:4.9%(四半期の経常収益7888億円)
生命保険業界の3社では、第一生命ホールディングスとT&Dホールディングスが増収、かんぽ生命保険が減収という結果だった。
かんぽ生命保険では19年に「保険の不適切販売問題」が発覚。同社はその後、不祥事の「みそぎ」として同年7月から約2年弱にわたって営業活動を自粛し、21年4月から本格的に再開した。だが、再開から2年が経過しても保有契約数が減少するなど振るわず、生保3社決算では「独り負け」の減収となった。
ただし、そのかんぽ生命保険の利益面を見てみると、23年4~6月期は減収に陥っていたにもかかわらず、経常利益が前年同期比221.5%増(約3.2倍)、純利益が同80.9%増と大幅に伸びていた。
そして、増収を果たしたはずの第一生命ホールディングスは、経常利益が前年同期比27.4%減、純利益が同24.7%減にダウン。かんぽ生命保険とは対照的に「増収減益」に陥っていた。
今回分析対象とした生保3社のうち、危なげなく「増収増益」で着地したのはT&Dホールディングスのみである。同社は前年同期の経常損益が433億円の赤字、純損益が593億円の赤字だったが、23年4~6月期はそれぞれ351億円と190億円の黒字に転換した。
第一生命ホールディングスとかんぽ生命保険の業績に話を戻すと、両者の利益面はなぜ明暗が分かれたのか。次ページでは、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、この2社の業績について詳しく解説する。