古え人のように荷物を背に歩く“銀の道”
地元民と一緒に入る共同湯でホッ
17世紀には世界の銀の産出量の3分の1を占めていたといわれる石見銀山。そこから銀の積み出し港であった温泉津沖泊(ゆのつおきどまり)への約14キロのトレッキングも、中村さんお気に入りのコースだ。銀山とともに、このコースも世界遺産に登録されている。
「採掘した銀を港まで運んだ、歴史ある『銀の道』を歩くと、荷物を背負って自然の中を歩くという、いたってシンプルな行為を人は昔から行ってきたのだなあと感じて、心地よいのです」
銀山では代官屋敷跡や間部(まぶ)と呼ばれる坑道跡などの遺跡が見学できる。そこから野を越え山を越え森を通り、温泉津沖泊へ向かう。
「歩きながらイチョウやカエデ、モミジの紅葉を楽しんでいると、この地方特有のヨズクハデが現れます。稲刈りの後、稲を干すときにヨズク(フクロウ)のようにハデ(稲架)するものです」
温泉津沖泊は、リアス式海岸にある天然の港で、船を係留するために岩盤をくりぬいてつくられた「鼻ぐり岩」が残っている。またここら辺りは、名前のとおり温泉地でもある。
「上品な温泉街です。共同湯に入りましたが、まるでつげ義春の漫画に出てくるような、シブイ昔ながらの温泉でした」