円の信用が減りつつある?
「トルコリラ化」はある?

 黒田前総裁の異次元緩和では日銀が禁じ手といわれた国債の買い入れを断行しました。その金額は今年3月末で576兆円になり、これは国債の発行額の半分を超えています。

 海外から見れば、日本は中央銀行が輪転機でどんどん円を刷って国が使っているのと同じ状態に見えます。結果、円の価値は前よりも下がっているんじゃないかと考える海外の投資家が増えます。その懸念で、円が安い方に動いているのではないかという疑念です。

 その国の通貨が、国際的に信用をなくしている新興国の一つがトルコです。5年前、トルコリラは1リラ=25円ほどでした。それが3年前には15円を割り、2年前に10円を割り、今は1リラ=5.4円までリラ安が続いています。

 通貨が安くなるとインフレがひどくなります。

 トルコでは7年ほど前まではインフレ率は8%前後で、それはそれで高いのですが、成長する新興国としては悪い水準ではありませんでした。ところが5年前に15%にインフレ率が飛び跳ね、2022年には70%台、今年は65%のインフレになることが見込まれています。

 日本がそこまでのインフレになることはないと思いますが、今、2年続けて2.5%前後で済んでいるインフレが、円が信認を失うとそのレベルで済まなくなることも事実でしょう。

 11月になればFOMCの今後の方針が明らかになります。24年は、本来であればゆるやかに円高に相場が動くはずです。

 その観点で一つだけ気にしておくことは、2024年になっても円安が続くようであれば、それは金利差要因だけではなくなったと備えるべき事態だということです。