理論上、戻るはずの円安が「戻らない!?」
最悪シナリオが急浮上

 金融市場の理論だと、この円安はいずれ止まるはずです。

 アメリカの金利はあと1回ないしは2回上がったところで利上げが終わるでしょう。すると、2024年から25年に2年ぐらいかけて、元の金利水準に戻っていきます。インフレが安定的に続いている状況を日銀が確認すれば、異次元緩和から利上げに方針を転換する予定です。

 そのため、日米の金利差を原因とする現在の円安は終わり、元の110円近辺の為替レートに戻るはずなのです。金融理論的には。

 しかしここが最大の問題点なのですが、「戻らない」という最悪のシナリオもあるかもしれません。

 実は、今年の円安自体、1年前の円安のときのことを思い出すと、ちょっと不可解な点があるのです。

 去年、1年ほどかけてじりじりと円安が起きて、10月に円は1ドル=151円94銭の最高値を付けました。その後起こったドル売り介入が転換点になって、1月には1ドル=127円21銭まで円高に戻したのです。年末年始に3年ぶりの海外旅行に出かけた人は「10月じゃなくてよかったね」と、束の間のプチ円高に喜んだものです。

 1月に円高が起きたきっかけは、確かに為替介入でした。しかし、本質的な理由は介入ではありません。

 介入後、為替はすぐに円安へと戻り、円高トレンドが始まるのはその数週間後です。理由はアメリカの金利の利上げペースが23年にはスローダウンすることが明らかになったからでした。22年に7回と、FOMC(連邦公開市場委員会)が開催される度にほぼ毎回利上げが行われたのと比べると、23年はそのペースが下がるので、いよいよ円高に戻ると説明されたのです。

 ところが、23年に入って二つ変化が起きました。