優先レーンの設置だけでは
エレベーター問題は解決しない

 前回記事のその後の動きについても、お伝えしておこう。

 筆者は記事をふまえ、東京メトロにバリアフリーの整備(ハード)、運用(ソフト)の考え方についてあらためて取材を申し入れたが、現時点で前回の回答以上のことは答えられないと断られてしまった。

 一方、前回記事で博愛エレベーターの「提案」に対する東京メトロの回答がテンプレートのようだと批判したが、これについては文字通り「参考」にして検討に着手したとの回答があった。具体策が固まり次第、改めて回答するというので、皮肉ではなく、お手並み拝見といきたい。

 最後にもう一点付け加えておきたいのは、筆者の一連の主張は、あくまでも「さしみちゃん」が訴えた駅エレベーターの優先使用問題に対する分析と提案であって、それ以上ではないということだ。

 従って、解決策もあらゆるエレベーターに万能なものではない。例えば優先レーン設置も途中フロアがなく、その都度利用者が入れ替わる駅エレベーターでは有効だ。しかし、途中で乗降の多いデパートなどのエレベーターでは、誰かが降りて優先利用者に譲る必要があるので、優先レーンの効果は薄いだろう。実際、ドアが開いたものの乗れずに見送る車椅子やベビーカーの姿は、誰もが見たことがあるはずだ。

 交通弱者にはいまだにさまざまなバリアが存在するが、それを一気に解決できる魔法のつえは存在しない。優先順位の問題ではなく、自分の手の届く範囲から、一つ一つ改善していかなければ、交通弱者の問題はいつまでも中ぶらりんのままである。