「VIVANT」「君たちはどう生きるか」「スラムダンク」大ヒット3作品の共通点とは?Photo:VCG/gettyimages

「君たちはどう生きるか」や「THE FIRST SLAM DUNK」「VIVANT」などで行われた、事前情報をほとんど告知しないという宣伝手法。このような宣伝はどのような場合に有効なのだろうか。一方で、今の時代、好印象を与えるCMとはどのようなものなのか。CM総合研究所代表の関根心太郎氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

「VIVANT」が示した
テレビドラマの未来

 昨年から今年にかけて、「THE FIRST SLAM DUNK」「君たちはどう生きるか」「VIVANT」(TBS系列)というヒット作品が生まれた。この三つに共通するのは、内容を多く語らない、もしくはまったく広告を打たないという、事前情報を最小限に抑えた宣伝手法で、ときにそれは作品の内容以上に話題となった。

 異例の宣伝手法を取り、見事ヒットとなったこの3作品の共通点について、関根氏はこう語る。

「映画とテレビドラマという違いがありますが、共通しているのは圧倒的なヒットの実績とブランドがあるコンテンツだということです。『SLAM DUNK』は漫画とアニメ両方で金字塔を打ち立てた作品であり、原作者の井上雄彦氏のファンも多い。ジブリも宮﨑駿氏という希代のクリエーターがいます。『VIVANT』の日曜劇場は過去には『半沢直樹』など硬派なドラマをヒットさせてきたブランド力と豪華なキャスト陣という強みがありました。異例の宣伝手法でも話題になったのは、こうした知名度と人気がベースにあったことが要因でしょう」

 そして、彼らの宣伝の姿勢についてもこう語る。

「『君たちはどう生きるか』は『宮﨑監督の最後の作品になりそうだ』というニュースや、鈴木敏夫プロデューサーによる『一切宣伝がなかったらみなさんどう思うんだろうと考えてみた』という公開前の発言自体がSNSやネットを中心に話題になっており、それがある種の宣伝になったとも捉えられますが、基本的にはマスに対して広告を打たなかった。スラムダンクは徹底的に内容を伏せました。VIVANTも同様です。これは商品をあえて見せなかったり、商品名を隠すことで話題化を狙う『ティザー広告』に似ていますが、コンテンツに絶対の自信がなければできない戦略で、勇気ある戦略だと言えます。ただ、少ない事前情報のなかで、ファンによる考察を誘発し、SNSを中心とした話題化につなげるという狙いも少なからずあったのではないでしょうか」

 ただし、VIVANTは他2作品とは、かなりその戦略の背景が異なっていると関根氏は分析する。テレビドラマは、リアルタイム視聴率の獲得が至上命令で、初回で視聴率をいかに取るかというセオリーがあるそう。そのため、初回放送前には、大々的に宣伝を行うわけだが、VIVANTはそれとは完全に逆だった。その理由は。