「日本マクドナルドは『ピクルスのリレー』篇など、何気ない生活の中にマクドナルドの商品が『小さな幸せ』として登場する企業CMを、50周年を機にシリーズ展開しています。auの三太郎シリーズはストーリーや出演者への好感が持てると、8年連続でCM好感度はナンバーワン。日清食品はアニメや歌などを駆使して、いい意味でとがったCMを作り続けています」
攻めたCMを日清食品が作れる理由は、やはりカップヌードルという50年を超えるブランドがあるからだ。ゆえに「ブランニューの商品だと、なかなかまねはできない」(関根氏)のだ。
CM巧者の企業は
企業理念の発信にも余念がない
一方、ストーリーやユーモアよりも、その表現や世界観で好感を得ているのがサントリーのCMだ。
「サントリーもCM巧者として有名です。特にアニメーションと『今夜はブギー・バック』などの音楽を活用し、ゆったりとした空気のほろ酔いのCMは、非常に好感度が高いです」
また、最近ではテレビCMだけではなく、サントリーはSNSを連動させた手法も目立ったという。
「広瀬すずさんを起用したザ・プレミアム・モルツのCMです。広瀬さんが初めてビールのCMに出演するということで、ザ・プレミアム・モルツという銘柄を隠し、『#すずのビールは何ビール?』というXアカウントを作りました。そして、動画で日ごとにビールの銘柄を明かしていくという手法を取りました。投稿は多く拡散され、その後の通常のテレビCMも注目されました」
プレモルのCMは、前述したSNSでの拡散という点をうまく利用した好例なのだ。同時に、企業理念を伝えている点もCM巧者たるゆえんだと関根氏は語る。
「サントリーは、水源や森を守るという趣旨のウェブ動画を配信し、企業理念のアピールにも余念がありません。とがったテレビCMが印象的な日清食品も、脱プラ政策の一環で、フタどめシールを無くすというウェブ動画を配信しました。ちなみに、このフタどめは開け口を二つにするだけ、という日清食品らしい憎いアイデアを採用することで、企業のイメージアップにもつながっていると思います。同じ企業でも、こうした硬軟織り交ぜたCMでギャップを生み出し、消費者の好感を獲得しているのでしょう」
消費者は企業の姿勢や社会貢献度なども気にするようになってきたため、このようなアプローチも広告戦略としては有効なのだという。最後に、関根氏は今後のCMの展望についてこう語る。
「『君たちはどう生きるか』のような最小限の宣伝は主流にはなりませんが、一方でまだまだテレビを含めたCMの影響力は続きます。特に、今年はワールドワイドなスポーツ大会が話題を集め、リアルタイム視聴も増えました。そのようなときに流れるCMは注目されます。大谷翔平選手を中心とした日本を代表するスポーツ選手を起用したCMも好印象でしょう。また、ネット上で人気なコンテンツ(Vtuberなど)とのコラボもSNSとの連携という意味では効果的です。ある企業の幹部は『CMには商品の売り上げを左右する、一発逆転の力がある』とおっしゃっていました。そういう一発逆転を信じたクリエーティブな精神を持っている企業であれば、テレビCMもネットCMも同等に力を入れ、魅力的かつ効果的なCMが作れるのだと思います」
“宣伝しない宣伝”により、改めて注目された広告。今後も、斬新な体験ができることを楽しみにしたい。