企業震撼!膨張する地政学リスク#2Photo:jimmyjamesbond/gettyimages, MacFormat Magazine/gettyimages

地政学リスクの高まりを背景とした経済安全保障の強化で、世界で「リマニュファクチャリング(リマニ)」と呼ばれる部品の再利用が加速しそうだ。特集『企業震撼!膨張する地政学リスク』(全5回)の#2では、新たな潮流を経済安全保障の“第一人者”に解説してもらう。加えて、スマートフォンなどの製品の部品を供給する「サプライヤー大国」である日本を襲う震撼シナリオも明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

「週刊ダイヤモンド」2023年10月21日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

米国で「部品の再利用」の新潮流が台頭
“第一人者”が警鐘「流れは加速する」

「リマニの波によってサプライヤー大国の日本の地位が崩れる恐れがある」

 経済安全保障の“第一人者”、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの國分俊史CESO(チーフ・エコノミック・セキュリティ・オフィサー)は、そう警鐘を鳴らす。

 リマニとは部品の再利用を意味するリマニュファクチャリングの略である。國分氏によると、米国で新たな潮流が台頭しているという。

 具体的には、すでに流通済みの製品を回収し、取り出した部品の再利用率を高める取り組みだ。部品を再利用して再び組み立てた製品でも、中古扱いとはせずに、新品と同等の性能を保証するのが特徴である。

 資源や廃棄物を再利用する「サーキュラーエコノミー」とは異なる概念だ。欧州では数年前から、購入した製品は、持ち主である個人が修理して使い続けられるようにすべきだとの「修理する権利」という考え方が高まっている。

 そうした動きに対応し、米アップルの「iPhone」では「14」から修理をしやすくなっているとされ、リマニが進む下地となっているという。

 リマニは当初はコスト削減という観点で進められてきたが、「米国でヒアリングして分かったのが、リマニは経済安全保障の文脈で加速する可能性が高い」(國分氏)とされる。スマートフォンなどの部品について、経済安全保障の観点からもっと管理すべきだとの議論が高まっていることが背景にある。

 では、世界的にリマニの波が押し寄せると、日本企業にはどんな影響があるのか。次ページでは、國分氏が、スマホを例に挙げ、サプライチェーンが激変する可能性を指摘。そのあおりでサプライヤー大国である日本の部品メーカーも総崩れになるというリスクシナリオを明らかにする。