続々と表舞台から消える閣僚たち

 今年、3期目に入った習政権で、表舞台から引きずり下ろされる閣僚が相次いでいる。7月に外相を務めていた秦剛氏が解任され、王毅氏がこのポストに復帰した。10月には李尚福国防相が解任された。李尚福氏の前任の魏鳳和氏も3月の退任後から現在まで動静が途絶えているという。

 興味深いのは、外相の座に再び納まった王毅氏がかつての王毅氏とはだいぶ異なる印象になっていたことだ。彼の発言は駐日大使時代(2004年9月~2007年9月、胡錦涛政権)とはギャップがあるどころか、今は習近平氏のご機嫌取りに必死な感じだ。前出の中国人弁護士A氏はこう語る。

「かつての王毅氏は日中友好を常に意識して、反日発言はかなり控えていましたが、今では反日あおりの旗手に成り下がっているイメージです。こうしたことに良心の呵責があるのか、昔に比べるとかなり憔悴し切っている面持ちです」

 実際、今の中国の高級官僚たちは憔悴し切っている。国有企業の管理職出身で、中国の政治に詳しい東京在住の中国人B氏はこう語る。

「今の官僚たちは、指導者の本意や腹の内は何なのか、まったく読めなくなっています。だから、国務院会議で『××についてしっかりやろう』とスローガンが打ち出されても、官僚たちは会場で拍手するだけで具体的なことは一切しません。やらないほうが安全だからです。それだけ今の指導者は、考え方をコロコロと変化させるのです」

 こうした中国国内の迷走ぶりからは、絶大な権力を掌握した独裁者の不安定な心理を見て取ることができる。何をやっても不安でたまらない「お殿様」はもはやご乱心状態に近く、自分に累が及ぶことを恐れる官僚はもはや手も足も出せない――中国が今、こうした局面にあることは想像に難くない。

 保身のために機嫌をうかがい、指導者にこびる連中が多い中で、李氏は、自身の原則を曲げない人だったと言われている。

「法学者はそもそも原則を曲げてはならない、という使命を負います。李氏は王毅氏と違い、自分を曲げませんでした。だから我々法曹界の人間は李氏を尊敬しているのです。しかし、そんな彼だからこそ、退任してからはかなりの心労が重なったのでしょう」(前出の弁護士A氏)