なぜ急死?健康不安説もあったが、残る疑問
死因は水泳中の心臓発作だと伝えられた。もともと李氏には「持病がある」「健康不安がある」などとささやかれていた。しかし、東京都内の中国人漢方医C氏は、「果たして『このような要人』が引退後にあっさりと亡くなってしまうのでしょうか」と、首をかしげてこう述べる。
「自分専門の医者をつけ、栄養価の高い食事を摂取し、高級漢方薬を服用するなど、ありとあらゆる手を使って長寿を全うしようというのが歴代の幹部に共通する余生なんですが…」
冷静な判断力を失った指導者の“厄介者リスト”の筆頭に李氏が挙げられていたとも考えられる。その一方で、前出の弁護士A氏は「あくまで推測の域にすぎませんが」と前置きしてこう語った。
「(李氏の死因は)心労とも考えられます。造反などの動きがないかどうか、相当厳しい監視を受け続けていたのではないでしょうか」
今から34年前、改革派といわれる胡耀邦元総書記の死をきっかけに、学生が民主化を求めて天安門広場に集まった。そこに軍隊が発砲し多くの犠牲者を出したのが天安門事件だ。その後“お上への抗議”はタブー中のタブーとして封印されてきたが、昨年11月末、上海や北京などで習氏に「退陣要求」を突き付ける抗議デモが起こった。
中国の人々の心が疲れ果て、限界に達しているならば、火は燃え広がりやすい状態だともいえる。それを警戒する習政権はさらに締め付けを強化するだろう。
追い込まれた「草の根」のエネルギーが向かう先で、果たして「歴史は繰り返す」のだろうか。