増える一方の管理職の業務

 また、オンラインによる在宅勤務の増加も、管理職の負荷に拍車をかけている。毎日顔を合わせていれば、立ち居振る舞いをちらっと見るだけでメンバーの状況をあらかた想像することができた。課題を抱えて厳しそうな状況のときにだけ、ちょっと声を掛けてサポートするくらいで事足りたのである。ところが、今はメンバーの普段の仕事ぶりがよく見えない。オンライン会議の画面では顔色もわからない(補正することもできるのだし)から、体調もよくわからない。

 そうなると、個々の状況を確認するための時間をとらなくてはならない。それがone on oneの面談などにもつながるわけだが、メンバーが10人もいれば大変である。面談をして終わりではない。そこで1件、2件、何らかの対応が必要ということになれば、それだけで日が暮れる。10人もいれば通常業務を行う暇もなく、まるまる1週間が終わってしまうのである。

 そこに、ハラスメントやコンプライアンス関連の研修や、実際に発生したトラブルの対処、残業時間の管理やらが加わってくる。とにかく現在の企業の管理職の職責は重い。質量ともに本当にそんなに要望して大丈夫ですか?というくらいになっている。

 では、その職責に見合った給料を会社が出しているのか。とびきりの好待遇であれば、重責であっても管理職も頑張り続けることができるかもしれない。しかし、残念ながらそうなってはいない。

 報酬がやたら増えているのは役員クラスだけであって、管理職の総額は増えていたとしても時間給ベースで考えればメンバーとさして変わらない。ストレスや心労を考えれば、管理職には(一部の野心的な人を除いては)誰もなりたくない。最近の調査の“8割弱の一般社員が管理職になりたくない”という驚くべき結果はむしろ当然のことといえよう。(参照:管理職の実態に関するアンケート調査

 ほとんどの会社では、管理職の負荷の軽減を真剣に考えなくてはならない状況にある。または大幅な報酬の増額を検討すべきということになるが、報酬を増額したからといって、過剰な負担を長年強いていては、管理職が心身の健康を損なう可能性が高くなってしまうから、会社の基本的な対応としては、まずは負荷の軽減ということになろう。