わかりやすい賢さとは対極にある維持型の特徴

 ここで、維持型に向く人の特性を挙げておこう。

・コミュニケーションスキル
誰とでも円滑な対話をすることができ、情報を伝えたり受け取ったりすることにたけている。とりわけ「聴く能力」が高いことが重要。
・対人関係スキル
「オレがオレが」と前に出るよりは、人々と協力し、信頼関係を築くのにたけている。他のメンバーとの協力を奨励し、対立を解決する能力がある。心理学や組織についての専門知識がある。
・協力とチームビルディング
異なる部門や個人を一つのチームにまとめるために、互いの利害関係を明確に把握するとともに、互いの共通している利益を見つけ、チームの協力を促進する能力を持つ。
・影響力と説得力
頭で考えて話すというよりも、長年の経験や苦労からにじみ出る言葉をつむぐ。ロジカルというよりは感情的に説得できる能力がある。

 こういった特質は、戦略策定力のようなわかりやすい賢さとは映らないが、本質的にはとても賢く、人物として信頼の置ける人のみが保有する性質である。維持型の管理職の仕事を価値のある仕事として位置付け、この役割を担える可能性のある人を見つけ、維持型の仕事を全うしてもらうことが、結果的に、推進型をも生かすことにもなる。

 今さらだが、戦略をデザインすることも重要なのだが、泥くさく人と関わることをいとわない人もまた組織にとっては重要なのである。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)