現在再雇用中だが、まだまだ物入りな60代夫婦
退職金の運用を検討中
「退職金が出たから、運用して老後資金を増やしたい」と家計相談に訪れたのは、再雇用で働き始めたBさん(60歳)とパート勤務の妻(63歳)です。定年を迎えてはいますが、現在も大学2年生の息子の教育費や住宅ローンの支払いが続いており、まだまだお金がかかる状況が続いています。
Bさんは、65歳まで再雇用で働く予定です。60歳になって数カ月後、退職金約2800万円を受け取りました。これを基に資産を増やしたいと考えていますが、投資には未熟で、かつ失敗例も耳にしているため、低リスクで資産を増やせる方法を学びたい、と相談に来ました。
相談時点での家計は、夫婦2人合わせて収入も支出も約38万円と、収支トントンという状況です。貯金は、現役時代の約200万円と退職金の約2800万円を合わせて約3000万円。公的年金は65歳から受け取るつもりで、夫婦で約25万円になる見込みです。住宅ローンの返済が終われば今よりも支出が減少する可能性もある一方、年金だけでは今の生活費には足りないため、(1)生活費を削減して支出を小さくする(2)老後資金を少しでも増やす必要があるという二つの課題があります。
Bさんは投資の初心者であり、退職金の投資にも慎重です。そこで、最初は毎月の家計から余剰資金を作り、積み立て型の投資を始めることを提案しました。投資に慣れた段階で、相場状況を見ながら退職金を投資に回す「スポット購入」を検討することで、資産の増加が期待できるでしょう。
退職金含め3000万円あったはずが
予想外の支出で800万円になっていた
しかし、この相談と同時期に、さまざまな支出で退職金が減っていました。息子の大学初年度費用や入学準備のために約230万円、さらに大学主催で行われる約半年の海外研修のために約300万円、住宅リフォームに約380万円、さらに定年記念の家族旅行で約280万円を使用していたのです。
当初、約3000万円あった老後資金は、約1800万円にまで減っていました。それだけでなく、Bさんは息子の海外留学や大学院進学に約1000万円も充てようとしています。そうなると、手元に残るであろう老後資金は約800万円です。
Bさんは「収入から投資できる」と考えていますが、実際には支出削減も進まず、投資に回せる余裕もありません。このままでは、必要な老後資金を確保するのは困難となり、より長く働くか、支出を大幅に削減する必要が出てくるでしょう。
「住宅ローンが終われば貯金できる」「年を取れば支出が減る」とBさんは楽観的ですが、いくら「たら、れば」といっても、現実は厳しいです。支出を減らす行動や、息子の学費の問題も解決しなければなりません。
老後に対する無計画な姿勢は危険です。不確かな未来に備え、しっかりと計画を練る必要があります。どうなるか分からない将来のことですから、「何とかなる」という考えでは、リスクが高まる一方です。確実な老後資金を確保するには、計画的な行動が不可欠です。