創業者の父が勝手に廃業した鍛造会社を、取引先ゼロ+キャッシュフローほぼゼロ+金融機関からの融資拒否という状態で引き継いだものの、類まれな経営手腕によって、わずか数年で業績を回復、その後100億円で会社を売却した平美都江社長こと“なぜおば社長”。
その壮絶な経営体験を、昨今のスタートアップ・ブームで、大きな夢を叶えるべく日々奮闘する若き起業家のために役立ててほしいとの思いから、『なぜおば社長の100億円ノウハウ スタートアップ 倒産させない絶対経営10の原則』を上梓。
著者の父親が廃業してお客も、従業員もいなくなって、お金もない状態は、まさにスタートアップそのもの。
著者自身、父親から解雇されていた時期に、自ら鉄鋼商社を立ち上げたこともあります。
さまざまな艱難辛苦を経験したことで培われた、いかなる状況においても会社を潰さず、さらに利益爆発をもたらすノウハウを、「10の原則」にまとめた1冊。(10の原則:ライバル分析の原則、3分割の原則、現金最優先の原則、アップデートの原則、スピードの原則、設備投資の原則、報酬の原則、自己責任の原則、トップ営業の原則、コンプライアンスの原則)
本連載では、なぜおば社長が実際に出会った、経営に悩む経営者のエピソードとその対策をその10の原則から抜粋・再構成のうえ3回に分けて紹介します。
第2回は、10の原則のうち「設備投資の原則」のエピソードをお伝えします。
常に古い車両を新車に替える、ある運送会社の深〜い考えとは
私が平鍛造の社長時代には、「設備投資」への意識があるかないかで、その後の経営に大きな差がついてしまった運送会社を目の当たりにしました。
設備投資の重要性が常に頭にあり、平鍛造に出入りする会社を、設備投資しているか、いないかで判断し、観察していました。
平鍛造は、注文主である取引先から1本数トンから数十トンの鋼材原料が届きます。それを製品にして、客先へ納品しています。
出入りする運送会社よって、30トントレーラーや10トン車の効率が大きく違っていました。
ある運送会社の車両は、常に新車でした。経営者に話を聞くと、車両はあらかじめ使う年数を決めておき、それを超えると必ず新車に替えるとのことでした。古くなった車両は、修理の経費がかかり、トラブルはお客さまにも、従業員に負担をかけるため、どんどん新しいものに入れ替えていくというのです。それがその会社の「設備投資」の方針でした。
車両は古くなれば故障が頻発し、大型のトレーラーや10トン車ともなれば、修理にかかる時間や料金は、ばかになりません。しかも故障はいつ起こるかわかりません。突然、車両が動かなくなれば、約束した納期に材料や製品を届けられなくなることも考えられます。そうなると信用も失ってしまいます。
長距離ですから、運転手の心的負担も大きいはずです。
いずれにしろ、古い車両は思いがけないときに故障し、事故にもつながりかねない、という懸念は消えないのです。